───山での昼食はカロリーメイト。
その選択は間違いではない。食費削減、体力回復、心のリセット、隙間時間の有効活用。カロリーメイトを取り入れたメリットは大きい。僕の胃袋からの異議申し立てを除いてな。消化器官が、「うどん、うどん」と騒ぎ立てた。
メイプル味で我慢しなさい!。

───思えば5月は暇だった。
日本には過労死するほど仕事があり、自殺するほど仕事がない。そう言われて久しいのだけれど、ゴールデンウィーク前から閑古鳥がざわめき始める。スケジュールが空白だった。そのタイミングで舞い降りた天使の誘惑、桃の摘果。農園主とは20年来のつき合いだ。断る理由が見つからない。
───ギャラをもらってフィットネス。
そんなぶらり散歩気分で参戦し、初日で息絶える。筋肉痛とか、人間関係とか、そんな問題では無い。身体が重くて脱力感が半端ない。それは、子泣き爺を背負ったかのよう。
もうね、夏休みに海でアホのように泳いだ帰り道にも似た倦怠感。時が経つに連れ、子泣き爺は大泣き爺へと変貌する。その夜、僕は泥のように眠った。夢のひとつも見られなかった。気づけば朝、もう朝?、モーニング、モーニング、岸田智史のきみの朝。
───その生活も10日を越える。
嫌でも身体は慣れてくる。桃があろうと無かろうと、毎月、第三土曜日のスケジュールは決まっている。その日のお昼は、うどんなのがお約束。リュックサックにお弁当。遠足バスの中のような気分で半日を過ごした。おじさんはYo!、ルンルンである。
───いつものお昼。いつもの、こがね製麺所(勅使店)。

ぶっかけ(冷)と鶏天をトレイに乗せる。無料の花言葉は、僕大好き。無料の薬味コーナーでワカメとネギを多めに乗せた。ネギの花言葉は、挫けない心。今は全く挫けていない。逆に絶好調である。
───白い粉は魅惑の味。
発酵したデンプンが絶頂期で釜茹でにされる香り。口内は露天広がる夏祭り、喉奥でうどんのコシを感じ取る。今、僕の胃袋は炭水化物を味わっています。消化器官すべてのセンサーがビンビンに反応している。まさに悪魔飯、それとは真逆の神の味。
───なんだろ?、この感じ。
ずっとニヤニヤが止まらない。一杯のうどんだけで、人は幸福を味わえるものだと実感する。だから、記事もスラスラと書けてしまう。

───うどん、うどん、うどん、うどん、うどん、うどん、うどん、あんぱん、うどん、あんぱん…。
千文字全てを「うどん」で埋め尽くすのは簡単である。それだけで伝わる気持ちだってある。我慢の先の向こう側、感動とはそういうものだ。うどんでやってみるか?。そんな衝動に襲われた。けれど、頭のネジがぶっ飛んだと思われる。
それは止めておこう。
Related Posts