猪柵の設置も終わり、一息ついている矢先、新たな驚異が現れた。
───パターン青、カラスです。
知人のトウモロコシが一夜にして消滅。漆黒の喰い逃げ野郎からの被害報告。カラス襲来である。カラスの悪さは耳にしていた、知能犯なのも知っている。噂によるとルパンくらい厄介な敵らしい、強敵である。
でも大丈夫、カラスなんて僕の畑で見たこと無い、鳴き声すら聞いてない。だからうちの畑は大丈夫。その矢先、麦藁隊から嫌な話を訊かされる。
───今朝、お前んとこにカラスおったで。
カラス、カラス言うけれど、カラス対策を僕は知らない。何をやれば良いのか?、何を用意すれば良いのか?、ズブの素人だから知る由もない。今やるべき事と、必要な物資をその場で訊いて第一種戦闘配備に入る。隊長から伝授された作業内容をエヴァに例えると以下のとおりである。
───よく聞いてシンジ君。
今回のミッションは畑上空にテグスを張る事よ。空中からの攻撃に備えて隅々まで鳥よけテグスを張り巡らせて。それでカラスからの攻撃を弾き返せるわ。ATフィールドと同じだと思えば理解出来るかしら。その面積なら1時間で作業を終える事が出来るわ。いい事、外気は高温よ、熱中症だけにはくれぐれも気をつけて。
───こんな感じである。
僕が死守すべきはトウモロコシとスイカとトマト。ピンポイントでテグスを張るという手もあるのだけど、面倒なので畑上空全部に糸を張った。透明なテグスはホーム・センターで用意したものである。鳥よけテグスと書いてあるから間違いない。
───高さが足りない、これじゃ糸に自分が当たってしまう。
外柵の支柱を伸ばして、縦横斜めにテグスを張り巡らせた。糸が切れても分かるように、所どころにキラキラテープも結んだ。若干の死角もあるが本数は少ない、たったの数本である。そんなの次来た時に足せば良い。
我ながら上出来、上出来。
───始めて30分で作業終了。
キラキラだねぇ。
日光に当たって煌めくテグスが美しい。それは、薄曇りでさえテグスの位置が肉眼で確認出来るほどであった。自己満足に酔いしれながらの冷やした胡瓜もまた格別。風に吹かれてキラキラテープが音を立ててで瞬いた。グレイトで、エレガントで、エクセレントで、パーフェクト。控えめに言っても完璧だ。
いつもで来なさい、カラス君!。
必要な野菜に必要なだけの水を与え、不必要な脇芽を切り取り、イケそうな脇芽は外柵の片隅に刺した。枯れても育っても構わない。脇芽は本体に何かあった時の為の保険である。
ミッション終了、今日は終わり、サヨリの元へと帰ろうか。残った胡瓜を口に含み、メールチェックで血の気が引いた。大切な何かが崩れ去り、やる気が一気に消え失せた。根本的に話が違う、加藤あいと阿藤快くらい違ってる。
だってそうでしょう?
───さっきのテグスの色だけど、カラスは見えない糸に恐怖するから、カラス用のは黒いのな。
は?。
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