久々に、畑に行くとジャングルであった。雑草が背丈を一気に伸ばす。その草むらの中に野菜があった。どっちが主役だか分からない。けれど、自然とはよく出来ているもので、雑草の中でたくましく茄子もトマトも成長していた。でもそれは、予想どおりの展開だった。三日に一度は雨模様。だから水の心配すら不要に思た。ただ、ひとつの例外を除いては…
願いが実るよつぼし苺。
それは、僕の畑の一等地で大切に育てた苺であった。その株が真っ赤になって枯れているのだ。知ってる、それ、嘘でしょ? 2023年6月22日に目撃した悲劇である。
嘘だと言って!
このショックを言葉で伝えることは難しい。強いて言えば、写真に残せないほどの動揺である。だってそうでしょう? このよつぼしは、僕らにとって特別な意味を持った苺である。そして、よつぼしの背景を知る人々が、ブログを通して見守っている苺でもあるのだ。つまり、みんなのよつぼし。そのよつぼしが無惨な姿に変貌していた…
どうしよう、どうしよう、どうしよう…
雷電が霞んで見える…後悔の念だけが僕の脳を支配した。でも、やっぱりどうしよう…。三株あった苺の苗を総点検。どれもこれもが終わってる。ボロボロだ。これまで数々の偶々を体験した僕だって、道端で、ばったり、貞子と出会ったくらいの絶望感。どう考えても復活の芽が見いだせない。
落ち着け、落ち着け。
頭の引き出しを弄って、これまで耳にした体験談を思い出す。その中に、有益な情報がヒットした。よつぼし復活の可能性はあり得るのか? 桃のマダムの体験談から攻略の糸口を探し出す。
「なんかねー、夏に苺が枯れたんよ。全部真っ赤。でも、冬になると苺が採れた。フフフフフ」
儚げにも見える苺の株。その生命力は想像以上に強いのだという。葉や茎を真っ赤に枯らせても、根っこさえ生きていれば復活もあり得るという。その可能性にすがらない選択肢を僕は知らない。だからまだ、終わっちゃいない! ぼかぁ〜ね、諦めの悪い男なんだよ。
偶々、耳にした話に手を伸ばす!
秋まで寝かせるつもりの畝を耕し始める。たっぷりと水を含ませた新たな畝。その中によつぼしの株を植え込んだ。土壌の乾燥を防ぐべく雑草マルチも施した。それでも復活の可能性はゼロである。それでもやって見ないと気が済まなくて、今日もサヨリは元気です。
枯れたよつぼしは、狭いプランターから広い大地の上へ舞い降りた。
やれる事はやり終えた。枯れた想い出を呆然と眺めながら、言い訳を考え始める僕がいた。どっかによつぼしの苗、売ってないかな? よつぼしは種から育てられるらしいから、スーパーでよつぼし探して種からやるか? この局面で、そんな思考を回しているのだ。時として悪魔の囁きは天使の声に聞こえる。つくづく思う、僕は汚い生き物だ。
その翌日、枯れた茎と葉の全てを切り取った。根っこが生きているなら新芽へパワーを集めるために。そして僕は神にもすがる。手の平をよつぼしに。念だか、気功だか、得体の知れない、謎のビームを押し当てる。気分は、お母さんのきんぴらごぼう。痛いの、痛いの、飛んでゆけぇ~、なのである。そんな愚行など、屁の突っ張りにもならないけれど、やれる事はやって帰ろう。都合よく、何度も偶々なんて起きないけれど…
その四日後。
マダオの芽はまだ出ない───これが始まると止まらない。マダオの観察日記が頭の中でグルグル回って止まらない。これが分かるアナタ、そりゃもう、お友達です(笑)
松崎しげる色した苺の株の隙間から見知らぬ雑草が芽を出した。ちっ、邪魔じゃ! それを抜こうと指を伸ばして息をのむ。絶望的だったよつぼしの隙間から、新たな命が芽吹き始める。絶望が裏返り口角が上がる。僕らのよつぼしは生きている! これ、絶対イケるやつに決まってる! 思い描いた次のプランを実行に移す。今日も飾った雷電が少しふわりと浮かんで見えた。
偶々の直列繋ぎは未だ続行中である。
コメント
え? 謎のビーム? そ、それは…もしや、き、雉虎ビーム? うわぁ~、明日の続きが楽しみです(笑)
ニョキニョキビームは効きますよぉ(笑)