もうひとつの夏休み
「オレにはな……オレには……大切な仲間がいるんだぁぁぁぁ!!!」 とある夏の日。 少年の叫びがこだました。その声は、悲鳴にも似た叫びだった。 私の名は安藤導しるべ。 この子を将来へと導く男だ。少年の名は、尾辻正義おつじまさよし。友人の間ではオッツーと呼ばれている。風の噂で聞いたのだけれど、そのあだ名には〝おつじ〟の響きと、彼の挨拶が「オッツー(お疲れ)」だったのが起因らしい。立場上、私は彼を尾辻君と呼んでいるのだか……。 では、話を五分ほど前に巻き戻そう。「もう、帰ってもいいですか?」 ダルそうな声で少年は言う。「ダメに決まっています」 私は彼を帰さない。一歩たりとも譲歩じょうほはしない。それ...