2024-01-20

土曜日(ショート・ショート)

この世界線の分岐点

俺は同じ夢を見る。  決まって見知らぬ公園を女性と散歩をしている夢である。そして、赤いベンチに座ってランチを食べる。ランチはいつも、彼女が作ったおにぎりだった。食事を済ませて彼女の家まで送り届けたところで夢から覚める。公園から見える大きな風車が印象的だ。散歩の途中だったり、ランチの途中だったりと、夢から覚めるタイミングはまちまちだ。  中学になるまでは、色付きの鮮明な夢だった。高校を卒業する頃になると、その夢を見ることも少なくなった。見ても断片的な夢であった。その夢には色もない。  社会人になって、夢の記憶を思い出す。  あの公園はどこなのか? あの女性は誰なのか? あの家は実在するのか?……...