2024-01-21

ブログ王スピンオフ

じいちゃんの一番長い日

男の人が泣いていた……心の奥底から何もかもが湧き出るような涙だった。 幼き俺は、号泣する大人を初めて見た。その涙は、悲しいでもなく、うれしいでもなく。人が抱く感情すべてを、何層にも折り重ねたような涙に見えた。フィユタージュの涙を流しながら、俺の隣で泣き崩れた人。それは、俺の父親おやじ……オトンであった。 ばあちゃんが言っていた。───あの人が本気を出したら凄いのよ……。 じいちゃんの部屋にある古びたギター。弦の隙間にピンクのピック。それが、アンバランスさを醸かもし出す。そのギターの音色を俺は知らない。鼻歌混じりで畑仕事。そんな、陽気なじいちゃんだけれど、本当の歌声すら俺は知らない。ギターがある...