今朝は朝から雨模様。長い晴れが止み溜め池には雨の花が咲いていた。数日間の気温の高さと天からの恵みとが相まって、萎れたネギの葉が息を吹き返す。タマネギの花言葉は不死なのだからこれから大きく育つに違いない。息を潜めた雑草たちも一気に目覚める雰囲気あった。
春は目の前。
───やっぱ、ここだな。
昼休みを抜け出して畑に来た理由は雷電である。そう、戦闘機のプラモデル。雷電を飛ばすには、飛んでいるように見せるには、この場所が好都合なのだ。だってそうでしょう?、ここから見える景色には電線が無いもの。都会とは違い田舎では何処に行っても仰げば電線、この黒い線が尊く見えない。
───一発撮りで写真を仕上げる。
それには如何せん電線が邪魔なのだ。だからと言って電線切ると逮捕されちゃう。やっぱ良い、ここは良い。雨雲のフィルター越しではあるのだけれど、光源の位置もしっかり確認。多分飛ぶ、きっと飛ぶ。
あとは雷電をこさえるだけ。なのに僕は頭を抱えていた。塗装がね、汚しがね、それが未だに分かっていない。未来予想図が見えてない。初めての塗装に腰が引けて、今日もサヨリは元気です。
───ちょっと知恵を貸してくんね?。
「絶対返せよwww」
にやりと笑うガンプラ職人。雷電の塗装方法について知恵を仰ぐ。とは言え休憩中の身でもある。「10分で教えろよ」と釘を刺すと、すかさずデスクの引き出しからガンプラ登場。無言で僕の鼻先にRX78を突きつけた。何故デスクにガンプラが?。RX78とは一年戦争でアムロが搭乗していた機体である。ウィングでも無く、SEEDでも無く、お父さん達が好きな方のガンダムだった。
───分かったか?。
「職人は腕で語るもの」と言うけれど、それだけじゃ、わかり始めた渡辺美里にはほど遠い。私のレボリューションが始まらない。なのに塗装されたガンダムを眺めると汚しの技術が半端ない。20年ほど使い込んだガンダムです。そんな貫禄が十分あった。相当な悪党の仕事である。何だかもう「師匠と呼んでも良いですか?」そんな気になるのがイケ好かない。
───分かったけ?。
だから何が?。一を見たら十を知れとでも仰りたいわけ?。軽くイラッとしたオーラを放つとマスターガンダムがニヤリと笑った。僕は今、お急ぎなの。そういうの、今は要らない。もう帰って良いですか?。
「お前になら出来る筈だ」
シャアですか?、ラルですか?、お前にって何ですか?。キミは今、何の役に入ってる?。禅問答とか、好感度とか、今そんなの不要だから。だから本丸教えてよ。「おしえてやろう、真っ直ぐ丈夫な野菜苗作りのコツってやつを…みたいなドヤ顔もやめてくれ。
「アレ持ってるか?、焼き色の達人」
「タミヤのメイクセットみたいなの?」
「そうそう」
「それがどうした?」
「プラモデルにはな、ウェザリングマスターつーのがある。調べてみなさい、今ここで。カーッwww!」
こいつ、頭のネジが飛んでるわ。もうすぐ春だもんな、大丈夫、大丈夫、そんな事もある。僕は渋々スマホからAmazonへ飛んだ。タミヤさんのウェザリングマスター、マスター・・・・っと。その検索結果に僕の頭のネジまでスッ飛んだ。一瞬で頭の中で雷電の塗装が完了する。そっか、そっか、その手があったか。
「理解したかね?、元粘土職人www」
これ以上、語ることはありません。これ以上、訊く必要もありません。だからもう一度だけ、このガンダムを目に焼き付けさせて。
「かたじけない、ガンプラ職人www」
そう一言だけを残して、僕は彼のデスクを後にした。そっかそっか、そう言う事か。昔取った杵柄が雷電に生きるだなんて。ガンプラ職人は腕で語る、人生には無駄など無いと。
───この借りはいずれ返す。
でも、今回はありがとう(笑)。
コメント
素晴らしきかなガンプラ職人!。ご近所なら私も是非ガンプラ見せて欲しい!(笑)。サプライズ企画、着々と進行中のご様子ですね。「あなたになら出来る筈よ!」玉ねぎのアイドル、じゅんこちゃん、ももえちゃん、まさこちゃんも応援しているでしょう。春が来て、プラモが仕上がり、畑の上空を雷電が飛ぶ。そして「畑、行きます!」いよいよ畑も本格始動!。これから全てが楽しみです。素晴らしきかな人生!ですね(笑)
畑に飛ばすべく素組みしようと試みました。お値段もお安かったのでパーツは少ないものの、今のはパチパチと組み立てられないようですね。操縦席とパイロット、構造上、着色してからの組み立てになります。機体ばかりに気を取られていて、パイロットにまで気づきませんでした。操縦席とパイロットを機体の中にはめ込む仕組みなので、先に細かな作業からになるようです。トイザらスのプラモデルコーナーで肌色の塗料を見つけないと。先ずはパイロットから進めます。知人のガンプラ職人はガードが固くて撮影NGだけれど、今度、盗撮を試みてみます(笑)。