───タイミングが悪かった。
何人たりともアレの魔力には適いません、反則以外の何者でもありません。だってそうでしょう?、ハンバーグ、ウィンナー、エビフライ、目玉焼き、赤いスパゲティ、フライドポテト…。
───日本よ、これがランチだ!。
おかず界のアベンジャーズたちが大集結。
人類は火と出会い、肉を焼き、様々な調理法を発明し、数世紀の時を掛けて味の築き上げた味の芸術品の数々。それらが並んだだけなのに、懐かしみを感じるのも不思議です。
デパート、屋上、観覧車、レストラン、覚えてる。つい50年前の出来事が目の前に広がります。日曜日、三越、お昼ごはんは、チキンライスの頂点に立てられた日の丸がチャームポイント。
───そう、お子様ランチ。
仕事終わりの空腹時に、あんなものを見せ付けられたら…誰だって悪魔に魂を売り払ってしまう。それはアナタも同じでしょ?。誰だってカロリーの誘惑に心は揺れるし、揺さぶられるものでしょ?。
───僕の心は鉄じゃない。
ビービーギャーギャーと泣き叫ぶ腹の虫。アレと出会ってしまうなんて夢にも思いませんでした。アレは、1分前までそこに無かった筈なのです。1分早く通り過ぎれば出会う事も無かったでしょう。神様のいたずらと呼ぶには残酷でした。パワーシティでの出来事です。
───2分前。
愛猫サヨリの晩ご飯、そう、カツオの刺身がお手頃で、ウハウハ気分でレジへ向かう途中、アレが並べられ始めたのです。
───大人のお子様ランチでした。
洋風ディッシュプレート(税込645.84円)
───ごちそう広がるモンゴル帝国。
プレートの上に広がる大草原に、これでもかと僕の好きなものだけが並んでいます。最後に食べたエビフライはいつだっけ?…いつもなら素通りだけれど、ブレーキが掛からない。やめろと言われても、今では遅すぎた。脳も、腸も、胃袋も、激しい恋でヒデキ感激!。アレは、煽りでした。心の煽り運転でした。
───悩む間も無く、アレはレジカゴへ吸い込まれます。そこからの記憶が曖昧で、どうやって帰ったのかも分かりません。
夕暮れ時、事務所の中、弁当見つめる愛猫サヨリ。罪悪感を封印し、恐れず、悪びれず、味わって、洋風ディッシュプレートを食べました。幸せでしたと僕の胃袋が言っています。
───ニンジンの花言葉は、幼い夢。
赤、青、黄色。遠い昔の色鮮やかな観覧車が脳裏を横切りました。箸を動かしている間、童心に返ったような気がします。ダイエットの神は敗北したのだけれど、今でもその行為に後悔はありません。
───満足感の向こう側。
気になって、栄養成分表示にそっと目を向けました。しばしの絶句。その後で意識が覚醒しました。やってもうた、やらかした。その夜のウォーキングは、少し長い距離を歩こうと決めました。大人のお子様ランチの熱量は、1011kcalだったのですから。
───これは罪深い…。
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