【昭和】スプライトの想い出【1リットル瓶】

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雑記・覚書き

 市の総体だか、県の総体だか、記憶が定かではないのだけれど、競技の真っ最中に見慣れた顔が立っていた。

──こんなところで、何やってんの?

 時代は、金八先生第二シーズンの頃である。別の中学に制服姿で凸するなんてどうかしている。

 まぁ、あちらさんは女子高生。中坊なんて関係ないか……。きっと、彼氏とでも来ているのだろうな。こいつはモテモテ美少女だから、単独行動など考えられなくて、今日もサヨリは元気です(笑)

 どの男を連れてきた?

 そんな事を思いながら、僕は横目でチラ見すると、こっちに向かってめっちゃ手を振っている……馬鹿なの? それともお姉さん気取りなの?

 こちとら競技の真っ最中だし、野球とかサッカーとは違うから。器械体操ってのはな。気を抜いたら死ぬんだよ。鉄棒から落ちたら痛いんだよ。分かってる? 先輩。

「何しに来たの?」

「応援に来た」

 知ってる、それ、嘘でしょ?

「彼氏と来た? そのついで?」

「応援しにバスできた」

 それって、“湘南の風”行きのバスですか?

 謎の状況とはこの事である。こちとら彷徨の季節の少年である。突っけんどんな態度しか取れやしない。これが昭和の男の子。そんな時代であった。

 まぁ、飽きたら帰るっしょ。そう思っていたら、結構な時間、体育館の前で立っている。昼飯とか食べないのかね? 先輩は、ポツンとひとりで立っていた。

 今の時代は知らないけれど、当時の中学。体育館には鉄格子のような設備があった。風は通すが生徒は通さん! そう言わんばかりの鉄格子である。

 体育館から外をみれば、囚人さん? 見学者がそんな風にみえた。でもきっと、檻の向こう側からは、こちらが動物園の熊とかにみえるのだろうな。

 そうこうしていると、先輩のうしろに中学ヤンキーたちが集まりだした。夏休みなのに不良って学校に来るの? きっと、夏色のセーラー服は撒き餌なのだろう。入れ食いだ。

 ゴツい男どもを尻目に、結局、先輩は表彰式のあたりまでいたと思う。演技得点の集計中、先輩は手招きして僕を呼ぶ。アンタはいいさ、アンタはな。こっちは、うしろのヤンキーにめっちゃ睨まれているんですけど? 帰り道が怖いやん。

「わたし、帰る」

「うん、帰って」

 公衆の面前である。男はだまってサッポロビール。余計な言葉を話さない。そんな語彙力もってない。これが分かるアナタ、そりゃもうお友達です(笑)

「ねぇ、帰ったらジュース飲む? 何が飲みたい? 一等賞のお祝いにおごってあげるから。わたしに何でも言いなさい」

「じゃ、スプライトでお願いします……一等賞て(汗)」

「わかった。いつもの駅で待ってるね」

 これ……何なの?

 うしろで後輩にはヒューヒュー言われるし、同級生には睨まれるし、顧問の先生だって鬼のオーラが漂ってるし。この競技、負けてたら地獄じゃないか。

 分かった! こいつは、新手の嫌がらせだな? 相手は高校生である。中学と高校では次元が違う。こういう遊びが流行っているのに決まってる。それが僕の結論だった。

 競技終わりの帰り道。顧問と僕らとは別行動。つまり、これから先はフリータイム。遊んで帰ってもかまわない。道草食ってもかまわない。試合終わりに気も抜ける。

「帰りにペロ寄ってく?」

 同級生がそう言った。

 ペロだっけ? ダイエーの地下街にあった店。アニメ専門店だったのは確かだけれど、四十年も昔である。店の名前があやふやだ(汗)

 琴電の駅へと向かうバスの中、ペロ組と帰宅組とに分かれる事で話がついた。当然ながら、僕は先輩を待たせてはいけない思うから帰宅組と共に帰る。

 何だかんだで学生時代は縦社会。一個上の命令は絶対であった。逆らうと後が怖い。

 駅を降りると先輩の姿が見えた。

 ホントにいるんだ……。

 うれしい感情よりも、後が怖い感じがした。何かしらの目に見えない恐怖があったのだ。

 腐ったミカン、タイマンとカツアゲ、ヤンキーとスケバン全盛期、夕陽に向かってバカヤロー。それが僕らの日常だった。

「お帰りぃ~。はい、スプライトぉ~」

 そのスプライトをみてギョッとした。中学生の僕である。まさかの1リットル瓶に裏をよむ。こんな高級品をくれるだなんて……

裏があるから……お・も・て・な・し。

 半分凍ったスプライト。半分凍てつく僕の心臓。でも、その喉ごしは人生初の体験だった。何これ美味い。溶けた部分がスプラッシュ!。その味今でも覚えている。

 空き瓶は、後で酒屋に売りに行こう……だってそうでしょう? 二十円もらえるし(笑)。

 ちなみにだけれど、あの空瓶、今ならメルカリで千円から二千円ほどの価値がある。あのとき、僕に先見の目があったなら……いや、なんでもない。

 それからしばらく、コーラもスプライトも半分凍らせて飲んでいたのも言うまでもない。単純なガキである。

 そんなスプライトを飲み干すと、特に何かの要求もされず、特に何かを話すわけでもなく、その場で互いに別の目的地へと移動した。僕は家に帰り、先輩の足取りは闇の中。

 今でも偶に思い出す。アイツはいったい何なんだ?

 それが後のワーちゃんである。

コメント

  1. ありゃ、コメント欄に仲間がいた^ ^
    私も放送部でしたwww
    その番組のナレーションしまーす^ ^

    • 是非、お願いします! できれば取材も一緒に来てほしい。表彰式の後にインタビューもしたいから。

      • あらあら、お二人とも同じ部活だったんですね(笑)

  2. 器械体操? 雉虎さん、スゴいですね! 僕は放送部でした。同じ学校なら、取材して夏休み明けに放送したでしょうね。「優勝への道のり」とか「美少女の先輩が見守るなか、堂々の優勝!」とか…。色々と想像したけど、よく考えたら僕は1月生まれなのでワーちゃんと同級生かも?

    • ワーちゃんとタメっすか?
      だったらパイセンっすね(汗)
      それはワーちゃんに知らせてなければデス(笑)

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