───今日の現場はまんのう町だと訊いていた。
しかしそこは、僕の知ってるまんのう町ではなかった。だってそうでしょう?、どんどんと車で山道を登ってゆくのだ。「こんな所で下ろされたら無事では済まないな…」そう呟くと、4人の男を乗せた車内に笑いが広がった。
山、山、山…静かで良い所である。
数日間、ゆっくりとブログでも書けたら最高だろうな、3日で飽きると思うけれど。車はグネグネとした蛇のような坂道を走り続ける。20分ほど大自然の眺めと空気を満喫した後、目的地であろう場所に着いた。
───ショッカーのアジトかよ?。
現場に到着したのは午前8時。
山中の巨大な施設が大自然とは調和せず、人工物が悲しいほどアンバランスに見えた。今日の注意事項はただひとつ。「マムシ(毒蛇)が出ます。噛まれないようにね」だけ。半笑いの緊張感にちょっとしたテーマパーク味を感じる。文字通りの足下注意、今日も生きて帰る。
───前言撤回、長居は無用!。
今日は半日のやり切り仕事。つまり12時には撤収の予定である。帰りの移動時間を加味しても13時にはお役御免。道中で昼食を取れば13時30分という算用が成立する。その筈だった。
───予定は未定なのも悲しい現実。
マムシは出ずとも仕事が増える。
なんやかんやで現場を出たのは13時を少し回ったところである。この1時間のロスタイムが後に響く事など僕らは知る由もなかった。何はともあれ昼飯である。
───お昼、どこにしますか?。
それはそれ、譲り合いの優しい世界。「はま寿司に行きましょう」とドライバーが口火を切る。これはこれ、「えー?昼から寿司て、貴様、何様?」満場一致で即却下。寿司職人が握っているのは真心というけれども───だ、真っ昼間からその気になれず、今日もサヨリは元気です。
───今からなら山越うどん、行けるっしょ?。
今、キミ良いこと言った!。
山越うどんは誰もが知ってる香川の名店。知名度全国区のうどん屋である。けれども僕は一度も山越うどんを食べた経験が無い。混んでるイメージだけで足が遠のくのだ。僕の中での山越うどんは、ある意味、都市伝説の中にだけ存在するうどん屋でもあった。いつかは「山越」的存在に他のメンバーが後を押す。
───満場一致で山越決定。
朝、通った道を折り返しているだけなのに、初めて通っているような錯覚の中、はじめての山越うどんに、さつまいも収穫前の夜くらいワクワクしているオヤジがいた。今日の記事は山越で決まりである。
───時刻は午後1時20分。
山越うどん第二駐車場前で嫌なモノを見た。無数に飾られた巨大な風車では無い、正方形のワンルームマンションの床ほどもある巨大な看板に描かれた「営業時間9:00ー13:30 定休日:日曜日、水曜日」の文字にである───予定通りに終われば…。思わず漏れるため息と「屋島のキリンならまだ開いてる時間なのに」の声。
───とりあえず寄ってみよう。
僕らは山越うどんの前まで車を走らせた。駐車場にはまだまだ車が止まっている。チャンスはある、まだイケる、諦めたらそこでゲーム終了ですよ、皆の衆。うどん屋の前、停車した車内、僕はボソッとつぶやいた。
───まだ、5分もあるで!。
ドライバーは無言ではま寿司へと進路を変え、車窓からの景色は色褪せて見えた。今日は失敗だったけれど、今日で世界が終わるわけじゃ無い。打つ手はあるさ、うどんだけに(笑)。
コメント
明日アメリカに旅立つ前に食べたかったってお願いすれば行けたかもしれないのに。
あと5分で諦めるなんて
松岡修造に説教くらうなー
その手があったか!。
作業着でも大丈夫だろうか?。
今度、使ってみよう(笑)。
あらら‥。残念でしたねぇ。いつとは言えない、いつかまで、山越うどんの実食は先延ばし‥。でも、うどんだけに“打つ手はあるさ”とは‥、確かにね!うどんも、先に延ばしてから、折り返しますもん。すぐに折り返し来店出来なくても、予定の未定の山越うどんの食レポ記事、楽しみにしています。
ホントに希少なチャンスを逃しました。楽しみは後回しとは言いますが、目前の楽しみが泡と消えたのは些か辛いです(汗)。これで学習したので次のチャンスは絶対に逃しません(笑)。