───この子、育ってる…。
親指姫より小さかったスイカの実が、数日で野球ボールサイズに成長した。この子は貴重な一粒種、ナンバーワンよりオンリーワン。個性を伸ばして大切に育ててあげないと。おっさんに母性が芽生えた瞬間である。
───うん、キショい。
二匹目のドジョウを求めて西瓜の蔓をかき分けると、一瞬で芽生えた母性がリセットされた。なんだ、なんだ、第三次ベビーブームか?。リングも、貞子も、そこまで増殖しないって。まだまだ、子ズルも、孫ズルもグングン伸びる。この勢いは止められない。この先もっと伸びるだろう、伸びるって噂だし。
───スイカを諦め、放置した結果がこれである。
口酸っぱくして「西瓜はね、難しいよ」「初心者には無理」。そう、訊かされ続けた結果の出産ラッシュ。言うなれば畑の確変、高設定の予兆と前兆、西瓜の暴走。想定外の現実に背中の汗が冷や汗に変わる。
───間引いて差し上げないと。
育てるところか間引きが必用。吸血娘じゃないけれど、ドーナツ片手に自然ぱないの。自然の半端無さから状況が180度方反転した。西瓜って一苗に2個とか3個で育てるんじゃなっかっけ?。間引きますか、間引かれますか?、どれを間引こうか…ん?。
───縦の蔓はあなた、横の蔓はわたし…。
間引くったって、蔓はリオのカーニバル。
細長い蔓が幾重にも絡み合ってワケ分からん。水曜8時の「このこ誰の子?」状態なのだ。蔓を辿るも根本分からず───そうこうしてると茎折れた。え?…今、ポキンって言ったよね?、ポキンって折れたよね、クッキー(茎)!。
指から伝わるポッキンの感触に僕の心も同時に折れた。これ以上の干渉などあり得ない。二次、三次と被害が増える。こうなっては触れない。触って良いのは折られる覚悟のある奴だけだ。そんなの外科医だけじゃない?。例えるならドクターX。強烈な目力と、豊富な知識と、積み重ねたキャリアを武器に、ハサミ片手に摘心と間引きをこなす…みたいな。
───とは言えこの炎天下。
通りすがりの外科医どころか、ひとっ子ひとりも見あたらない。うれしいため息を残しつつ、立体栽培の様子を伺う。こちらの方も順調で2個のスイカがマナちゃんカナちゃん、仲良く並んでぶら下がっていた。そこにも1個、ここにも1個。こっちは自力で何とか出来る。
だがしかし、露地栽培は打つ手無し───かくなる上は是非もなし!。
畑のばあちゃんらに相談しよう。だってそうでしょう?、彼女ら畑の大門未知子。知識と経験もさる事ながら、スイカを育てたキャリアが違う。葉の色、茎の太さ、実の成長具合。ひと目で施術を見極めて、シャキン、シャキンとハサミを入れる。
───ハサミさばきが速くて的確。
男女平等と言うけれど、細かい作業はおっちゃんやんない。知識あれども実践経験は謎なのだ。つまり、おっちゃんの助言の信憑性たるや…いや、何でもない。
現場からは以上です。
コメント
もしかして、畑の女神と出会ってました?昨年のクリスマス。222のエンジェルナンバーレシートの記事。努力が報われる、更に運命の異性と出会う暗示も、と。時を経て、今では畑への愛が、形になって結果になって、どんどん生まれてる‥。地球も運命の輪も、知らないうちに回ってますね。
そうそう、畑には女神様がいるのでしょう。行きたくないのに行くしかないとはこの事。最近はスイカを始め作物に変化が見られて楽しいです。いつもコメントありがとうございます。「エンジェルナンバー「222」のレシートは、頑張りが報われる前兆」まで覚えていてくれて嬉しいです 今日はちょっと面白い名前の玉葱の種を注文しました。到着したら記事にしますね