───猫はコタツで丸くならない
それを知ったのは、愛猫サヨリと過ごした初めての冬だった。コタツの住民と化した猫は中で何してるのだろう?。
興味本位でコタツ布団をめくると、そこはトロピカルムード満点の南国だった。ビーチで寝転ぶ女豹のようで、ビョーンと脚を伸ばし、寛ぎ倒し、強い目力で僕を睨んだ。
───若き日のサヨリさんは美人さんだった
雪やこんこ♪あられやこんこ♪
幼少期から刷り込まれた常識が、ガタガタと音を立てて崩れるのを感じながらも、「あら、可愛い」とほくそ笑む僕がいた。
───猫はコタツで丸くならない
十年以上も昔の話だ。
それからコタツがサヨリさんの冬の城になった。寒ければコタツに入り、暖まると僕の膝で転がる。その繰り返しが十年以上つづいた。
───しかし、この冬はいつもと違う
コタツの天板で過ごす時間が長くなる。ノートパソコンの裏から僕を監視し始めた。それは何故なのか?。その秘密は天板の特性にあった。
───僕のコタツの天板は、凄く熱くなります
うちのコタツの天板は熱い!
僕のコタツの天板は熱い。ちょっとした床暖房で、アイスクリームやチョコレートなどは置いておけない。直ぐに溶けてしまうほど熱くなる。
タンスのゲンのコタツは、元々、そういう仕様だった。購入前に読んだAmazonレビューにも書かれていたし、購入直後の記事でも検証した。天板に手のひらを当てると、ビックリするほど熱くなった。
───彼は今頃になってそれに気付いたらしい
コタツの中が暖かいのに決まっているのに、わざわざ天板の上で時間を過ごす。僕がノートパソコンで何かしら作業をしている時は特にそう。
最初はミルクの催促から始まった。コタツの天板から僕を睨む。5分、10分、15分、、、。僕が要求に気付くまで諦めない。
───強い意志がそこにはあった
───折れない信念と諦めない心
そんな事が数回あって、天板の上の居心地の良さに気づいたのだろう。この冬、僕と過ごす大半の刻を彼は天板上で過ごし始めた。もう対面、ずっと面談。それと同時に、僕の膝の上ががら空きになる。
───軽くなった膝が少しさみしい
画面の右側には、当たり前のように彼の顔半分が並ぶ。最初は猫の視線が気になっていたのだけれど、今では壁紙の延長線。画面の横に小さな顔が見えないと、何かしら物足りない。
───膝の上か?、天板の上か?
次の冬。
彼はどちらを選ぶのだろう。
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