───予想を越えてた、舐めていた、写真忘れた
去年の話である。
海鮮市場きむらで、幸せの半額シールが貼られた鯛と出会う。もちろん刺身用。すぐに喰いつく、ダボハゼの勢いで。鍋?…持ち帰って異変に気づく。刺身用の斜め上に貼られた「鍋用」のシール。やられた、刺身には使えない。つまり、愛猫サヨリは食べられない。
常連様はご存じだけれど、サヨリさんは火を通した魚肉を食べない。困った。この時間から刺身の入手は無理だった。万策が尽きた。
───よし、蒸そう
火を通さなければ鯛が食べられない。僕はスチームクッカーで鯛を蒸してみる。蒸し上がった鯛を見て二度見した。蒸し上げた鯛の身に、大きなドラマはなくても小さな感動がそこにあった。鯛の身がプリップリだった。熱々のご飯と一滴の醤油だけで三ツ星レベル確定の予感。
───これは罪深い
だってそうでしょう?、これ、猫のご飯だから。僕の口には入らない。そっぽ向かれたらその時だ。待機状態のサヨリさんの鼻先に、僕は蒸した身を近づけた。刺身以外受け付けない、受け付けない筈だった猫の口の中で鯛の身が躍っていた。踊り狂っていた。
───喰うんかーい!
目から鱗どころか縁側まで落ちた。
朗報だった。今後の方針の大転換。それは、猫のエンゲル係数の軽減を意味した。
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瀬戸内で鯛は買うものでは無くて貰うもの
───僕の身近に釣り人が多い。自前の船で海に出る
「鯛が釣れて冷凍庫が一杯だ。そう言えば、お前んち猫いたよな」
そんな話も珍しくは無かった。腐っても鯛。高級魚の筈の鯛だけれど、アホのように釣れる年がある。それはスーパーの鮮魚コーナーでの相場を見れば、海の様子は手に取るように分かる。天然地物の価格が急落するのだ。去年は天然真鯛と天然ハマチが安かった。
釣りに行った友人の話を訊くと、鯛が釣れて困っている話も珍しくはなかった。釣るのは良いが処分に困る状況が発生していた。お刺身なら毎日でも欲しいくらいだったが、世の中にそんなに甘くない。
「贅沢な猫やな、猫様やん」
とも言われるが、刺身しか食べないし、高齢だし、もうすぐ死ぬから。そんな話をすると、友人らは揃って口を閉ざした。
あれから2年の時が過ぎ去る。
相変わらず、サヨリさんは刺身を食べ続け少し太った。毎日いつも寝てばかり。お腹が空いたらムクっと覚醒、ご飯の催促する老猫が愛おしい。今日もサヨリは元気です。
───鯛を蒸したらガツガツ食べる
そんな状況でこの結果、もっと早く気付けば良かった。速攻、僕は釣り人たちへ「鯛の受け取りオッケーじゃん!」と打診。小さな冷凍庫の掃除をし天然真鯛の受け入れ準備を始めた。
───あとは待つだけ
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