採ったばかりの唐辛子を生で囓るとピーマンの味がした。
───辛くない、むしろ甘い…。
そんなの絶対あり得ない、こんなの今まで見た事ない。グリコLEE30倍を食べたらカレーの王子さまだったくらいの衝撃走る。
だってそうでしょう?、ホーム・センターで買った苗は紛れも無く韓国激辛唐辛子なのだ。辛くて当たり前。甘い方がどうかしている。なのに噛めば噛むほど甘さ増す。いったい誰の仕業なんだ?、僕だけど…。そう、その甘さは僕の愛情の結晶であった。
───この唐辛子、どうやって作った?。
発端は三日連続ブログ出場を飾る、職場の同僚ワーチャンの一言からである。それは見事に僕の地雷を踏み抜いた。ガンジーだって助走つけて殴るレベルである。韓国激辛唐辛子が甘いワケがない。韓国だもの、激辛だもの。どんなに抜けてる僕だって、それくらいの事なら分かる。そして、唐辛子は生で囓るものじゃない。出る所に出たって構わない、こっちは上から読んでも下から読んでものウ・ヨンウ弁護士立てるから。これが分かるアナタ、そりゃもうお友だちです。
───韓国激辛唐辛子が甘いなんてあり得ない。そんな事より味覚障害が出てんじゃない?。こんなご時世だからPCR検査受けた方が良いぞ。
冷静さを取り戻すと、唐辛子の甘さよりもワーチャンの体調の方が心配になった。けれど、ワーチャンは挫けない。甘い、甘いと喰い下がる。仮に甘いと仮定しよう。でもそれは、僕じゃ無くってホーム・センターで訊いて欲しい案件だ。僕が育てたのは紛れもなく韓国激辛唐辛子なのだから。
───畑、行こ。
予期せぬ一言が解せなくて仕事帰りに畑に向かう。苗のチャームの確認にである。それは何度見ても韓国激辛唐辛子であり、チャームに印刷された写真と同じ実が目の前に───やっぱ、味覚障害だな。誰も責めはしないよ、このご時世そんな事もある。業務は任せろ、早く病院へ行ってこい、元気になったら帰ってこい。
───僕は無言でスマホを取り出した。
通話発信前に念のため、唐辛子の木から赤いのを採って囓ると甘かった。冒頭文のとおりである。シャキシャキとした食感で、辛みもエグ味も感じない。どう表現しても美味しいピーマンが着地点。ごめんなさい、ごめんなさい、疑ったりしてごめんなさい。僕の中のガンジーが撤退し、代わりに登場したのは金田一コナンであった。
───でも何で?。
いつも僕の畑は謎のデパート。じっちゃんの名にかけて、真実はいつも一つ。真っ赤な唐辛子を囓りながら、スマホを使って情報収集。あれだ…最近、何を検索しても欲しい情報が見つからない、昔はズバッと出てたのに。キーワードを探り探り増やしながら、ようやく僕が得た教訓は、唐辛子は甘やかすと甘くなるであった。
───ストレスを与えなけれ辛く育たない。
水やり、追肥、思いやり。唐辛子は半殺しで育ててこそ辛くなる。大切に育てるのは逆効果なのだそうだ。愛情を注いだつもりは無いのだけれど、無意識に大事にしていたのかも知れなくて、愛猫サヨリは元気です。
───今日から水やりは厳禁な!。
そう心に誓うと雲行きが怪しくなり、その数分後、雷鳴轟く土砂降りとなった。今年の僕の唐辛子はピーマンだと思って食べてね、ラー油作りも諦めた方が良いかもよ、ワーチャン。
コメント
スコヴィル値、0?の韓国激辛唐辛子。そんな‥、優しさが仇に?、優しさは罪って、こういう事?‥。あぁ、ある意味、よくわかりました。そのレベルの優しさと愛情で接しているかららこそ、サヨリさんは毎日、元気なのですね。そして、このブログ読んでる私も、毎日、くすっと笑って楽しく過ごせてます。
いつもありがとうございます(笑)。実際に齧ってみたらピーマンの味がしました。種はピリ辛だけれど刺激はかなり弱くて、サラダに入れても良さげでした。調味料のつもりで作ったのに調味料が必要な出来栄えでした(汗)。