───6月に株分けした長ねぎがそろそろだった。
さぞかし白いところも長くなっただろう。定期的な土寄せもちゃんとした自負ある。オカンの命もあり、てか、オカンの長ねぎである。ひと夏育てて掘り出すとさっぱりだった。
───白いところが長くない!。
白い部分がスーパーの長ねぎの3分の1ほど。これはもはや太ねぎですわ。大きなねぎ。つまり失敗。失敗は怖くない、怖いのはそれを伝える事である。
怖いなぁ~、嫌だなぁ~、気持ち悪いなぁ~…。
稲フェスに連れて行かれるくらい嫌な感じ。小松菜、菠薐草、ピーマン、韓国激辛唐辛子と間引いた大根を添える。
いそいそとオカンに長ねぎを差し出す状況を想像しただけで悪寒が走る。散々な罵声を浴びせられる未来しか見えなかったけれど、別の世界線がそこにはあった。
───上出来じゃ。
は?。
知ってる、それ、ボケでしょ?。この長ねぎを上出来という真意が分からない。だってそうでしょう?、これ、長ねぎだもの。これ、白いところ短いもの。これじゃ、すき焼きに入れる醍醐味すら味わえない。
───これ長ねぎやで?。
「何ゆうとん?、これ、九条ねぎよ!!!」
は!!!?、京都の?、伝統野菜の?、あの有名な?。
苦情は起こらず九条が飛び出す。さらに追い打ちを掛けられる。
「青いところを切って食べるやつ!!!」
今、随分な告白してくれたね?。長ネギ、長ネギって、今まで散々ブログで書き続けてきたのに…だ。今、それ言う?。どっと肩から力が抜けて、無口な僕が無口になった。今日は誰とも会話したくない気分である。
───僕の夏を返せ。
けれど、ネギの花言葉は挫けない心。
気を取り直して未来を歩こう。明日は九条のねぎで蕎麦でも作ろ。うどんでも良かったけれど、僕の中でのネギは蕎麦。うどんのネギは細いやつ。マルナカで蕎麦と蕎麦よりも高額な出汁を買う。蕎麦玉の倍くらい出汁の方がお高いなんて、この蕎麦、絶対偽物だ…。どう考えても値段がおかしい。
知らんけど。
蕎麦と出汁と九条ねぎだけで1杯のかけそばを作る。作り方は簡単である。どんぶりに蕎麦玉を入れ、出汁を入れ、レンジを4分にセットして温める。
その間に九条ねぎをザク切りにして、3分あたりでどんぶりに九条ねぎを並べてチン♪まで待つだけ。誰でも作れる簡単料理である。
───ふた玉買ったけれど、ひと玉はダイエット。
蕎麦じゃないであろう蕎麦は日常的に食べていた。50円が美味いのだ。僕にとっての馴染みの蕎麦。それに九条がどこまで味を昇華させるのだろう。楽しみである。
熱々の蕎麦はいつもの味。さてさて、九条ねぎの実力とやらを見せてもらおうか…。何これ美味しい。うどんでもイケる。
リピ確定の瞬間である。
レンジでチンしただけなのに、シャキシャキ感の主張は衰えず、歯応えある食感は健在。葉の大きさと厚みと独特の「ぬめり」が、これまで脇役扱いだったネギを主役レベルにまで引きあげる。それは、世界が憧れたナスターシャ・キンスキー。
───五条先生!うちのおネギは美味いです!。
このネギ、何か芽生える予感する。
そう考えた瞬間、僕の悪巧み働く。あと何本あったっけ?。脳内で残りの本数を数えいぇいると、得意先の事務所のマダムのレシピが降臨。
「アルミ箔にネギを入れて、バターを乗せて焼くと美味しいデス!(テヘペロ)」
これである。四の五の考えている時間は無い。時は待ってくれない、昼休みは短いのだ。バイクを走らせ畑に向かう。イチゴに水を与えてネギを抜く。あとはバター入手でミッション完了。
───ではひと回り…。
新しく立てた畝の調子を見ていると、3本目の畝にサツマイモの茎。「これ、邪魔!」と引っ張ると、「とったどーーー!!!」手頃な芋が1個採れた。逆算すれば、20日以上も土の中で眠っていた芋である。
これは美味いに決まってる。
───畑のミラクル。
頂きました!。
コメント
あら、美味しそう!。誰でも簡単レンジで4分。キジとら4分クッキング‥。あっ!。大切な調理ポイントを忘れるところでした。本気でこの九条ネギ蕎麦を再現するには、まず、美味しい九条ネギを育てなければ。ひと夏クッキング。シャキシャキと畑で働いた者だけが味わえる、至福の九条ネギ蕎麦‥しかも、お母様のお褒めの言葉付き‥良かったですね(笑)。今日も、お疲れ様でした。
いつもありがとうございます。
収穫するまで長ネギとして育てた九条ネギ。友人にあげたら「美味かった」と言われてほくそ笑みました。美味しいものと笑顔に出会うとはこの事で、だったら、来年は株分けしてもっと植えようと思いました(笑)。