───何の音?。
事務所の中で音が聞こえた。この空間に存在する全ての物体をイメージする。ガサリに感じる危険な異変。なんか、こう…土とか砂とかをぶち撒けたような鈍い響き。何だろ?、隣の部屋からの音かいな?。僕の真後ろでしたような気がするのだけれど。今は愛猫サヨリのトイレの掃除の最中、だからチョット忙しい。音なんかに構ってられない。「またご飯とミルクを残してるのな」…何故、サヨリはご飯を残す癖があるか?。全部食べてくれたら嬉しいのにな…。そんな愚痴を交えながら、謎の音源をしばらく考え、答え出ぬままトイレ掃除を再開すると、
───あ”。
心当たりあった。枯れた頭が心当たりを思い出す。多分そう、きっとそれ。うゎ〜どうしましょ?。僕の視線の先にあるもの。他でもなく炬燵である。炬燵と書いてコタツ。炬燵の中に置いた危険物。程よく濡らしたもみ殻に埋めた芋の箱。芽出しに適した温度にすべくコタツの中に入れた箱。それを思い出した瞬間に背中を伝う嫌な汗。見なくても分かります。見る必要などありません。出来る事なら見たくない。炬燵の布団をコッソリめくると「にゃ〜元気?」。コタツの中で寛ぐサヨリと目が合った。彼が寝そべるその場所に、あった筈の箱が無い。
つまり、や・ら・れ・た…。
───問題です。これがコタツの中でひっくり返ると、どうなると思う?。
あれは地獄です、生き地獄です。
殺人以外のイタズラは全部許す。そうサヨリに対して豪語している僕だけど、この状況には流石にへこむ。ガクリと落ちる肩とガクッと曲がった膝小僧。ホンボシ サヨリは僕の脇の間をスルリと抜けて背水の陣で僕を睨む。その太々しさたるや「だってしょうがないじゃないか!」と言わんばかりであった。この際だからハッキリと書いておこう。猫を飼うとは岩下志麻の覚悟しいや。神が作りたもうた可愛い極道、猫と暮らすとはそう言う事である。
───この程度で怒ってはいけない。
はぁ…。
コタツの天板を持ち上げ布団を剥ぎ取る。奥底には湿ったもみ殻と転がる3本のさつまいも。もみ殻をほうきで集めてチリ取りに移していると、サヨリは急にご飯を食べ始めた。その勢いたるや孫悟空。残したパウチを一心不乱に平らげてミルクも一緒にカラにした。何それリセット?。それともアリバイ工作なのですか?。空っぽになった二つのお皿を覗き込んでいる。しばらくすると、サヨリは炬燵があった場所へと音もなく歩を進めた。
───「誰にやられたにゃ!?」
とでも言いたげに事件現場を覗き込む。スクっと小さな頭を僕に向けて、大きな瞳を見開いて、共に真犯人を探そうの顔つきあった。意外過ぎる猫の行動は、確信犯で、模倣犯で、人たらしの天才だった。おとぼけ面の数え役満に僕のガッカリが溶けて消えた。もう良いよ、こことトイレの掃除も終わり。サヨリは僕がコタツに座ると、背を向けて膝の上でくつろぎ始める。当然で、当たり前で、まるで何事も無かったかのように。
そこに反省の色などまるで無い(トップ画像参)。
今回の一件で最も残念だった事。それは、もみ殻に埋めた部位がフニャフニャに腐ったさつまいも。このミッションは失敗に終わった。だがしかし、失敗は人生の踏み台に。芋の芽出しは仕切り直す(涙)。
コメント
よしよし、サヨリさん(笑)。君はお利口さんだねぇ。いたずらじゃないもんね。良い事をしたんだもんね。猫の嗅覚は人間よりも遥かに優れています。そりゃあ、コタツの中に腐った芋があれば蹴散らかしますよ(笑)。猫は酸っぱい匂いとか、腐敗臭は体に悪いモノと認識するようで嫌がりますから。サヨリさんのお陰で早めにふにゃふにゃのお芋さんに気付いて良かったですね。とは言え、惨劇後のお掃除‥お疲れ様でした。さぁ、腐った芋なんかぶちまけて、次のプラン!。成功を心より願います (笑)。
そっかそっか。サヨリさんは賢いね(笑)。ドタバタ記事を書いた後だけれど土曜日の夜はこれから。スーパー覗いて見ようかな?。種芋も見て置きたいし半額のお刺身があったら買って来よう。お芋の芽出し、三度目の正直で頑張ります(笑)。