抜け毛なんて笑っとけ、笑っとけ

くし
雑記・覚書き

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───抜け落ちる…頭髪。

愛猫サヨリの喚毛期が始まる頃、僕の頭髪も抜け落ちる。いつもそう、いつだってそう。異変に気付いたのは、幼き息子とのシャワランビューティーの時だった。小さな頭を洗い流し、己の髪を丹念に洗う。

───髪、いきいき、つやつや。

じゃなかった。

───髪、いきなり、ごっそり。

そりゃ、我が目を疑いましたよ。だってそうでしょう?、指と指との付け根がホラーだもの。大切な何かの欠落だもの。心折れるもの。需要に供給が間に合わない。これが…噂の…あれ?。僕は血の気が引くのを感じた。

───30代後半に起きた悲劇。

久しぶりに合った同級生のビジュアルを変えるアノ現象。老化現象、オヤジの階段、加美乃素のコマーシャル。覚えたく無いのに忘れられない。あなたの知らない世界へと、足を踏み込んだ嫌な感触。

───終わったな…。

10代の頃、猫の額だった。20代の頃、普通になった。つまり、それが、予告で、予兆で、警告だった。人生の諸先輩らの笑い話が、現実味を帯びただけで笑えない話になる。どの話も、結果は見えてるのだから笑えやしない。

───インターネットはあてにならない。

まだテレホーダイが始まった頃、頭皮に関するネットの情報は稀少だった。結果論、極論、陰謀論。そればかりが目立ち気になる。真に受けるだけで別の病になりそうだ。街を歩く群衆の中から特定のヘアスタイルだけが目に留まる。カラーバス効果が止まらない。

───悶々とした時が流れる。

蛙と紫陽花と蝸牛の梅雨を抜け、かき氷が恋しい蝉時雨の頃、僕の抜け毛のブレーキに気付く。思えば、もっと前からだったのかも知れない。

───まだイケる、まだ頑張れる。

そんな気になった、未来が見えた、少し元気出た。恐怖は喉元を過ぎると好奇心へと姿を変えた。好奇心は禁句を質問へと変貌させる。

───春ってさ、頭の毛、抜けない?。

口コミリサーチを開始した。それはアナタも同じでしょ?。手当たり次第、同年代に鎌を掛けた。名刺代わりに乱用すると、生の声が多数集まった。

───なるほど。

総合的に判断すると、誰でも季節の変わり目は抜け毛が多いらしい。それに僕は気付かなかっただけ。夏毛から冬毛へ、冬毛から夏毛へ。家で飼ってる犬も猫もそうなのだとか。人類が幾千万年と繰り返して来た自然の摂理で理に叶っている。

───理に叶っていて欲しい。

今なら愛猫から実感できる。ブラッシングと掃除に忙しい喚毛期。けれど、当時の僕には目から鱗どころか、目から尾鰭まで落ちた。遺伝、アルコール、たばこ、ストレス、シャンプー…。髪が抜ける原因は人それぞれ。だけれど、学生時代に髪の毛をイジってた系の…いや、何でもない。

───あの年から20数年…。

僕の髪の毛は、あれから白くなったけれど、未だに健在で頑張っている。今年も抜け毛の季節が始まる。ストレスは髪の天敵。見て見ぬ振りしてやり過ごそう。抜け毛なんて気にすんな。

───笑っとけ、笑っとけ。

現実逃避で今年も逃げ切る。