───嗚呼、辛い。
他でも無い、右下半身が痺れて痛い。座っていると、どうにもこうにも。つまり、座ってなどいられない。かなりヤバイ状況のようだけれど、その実、普通に歩けている。歩く方が楽なのだ。その証拠に万歩計は1万歩を軽く越えている。じっとさえしてなければ全くの無問題である。
命までは取られない。

───問題はキーボードが叩けない事だった。
座ってダメなら立ってみる。スタンディングデスクを試みる。多分無理、きっと無理。違和感というより、嫌な予感が的中する。集中出来ない、お尻が痛い、足の痺れが煩わしい。活動限界まで15分では何も書けない。
───フリック入力やってみるか。
僕はキーボードをあっさりと捨てiPod touchを手に取った。これまで練習してきたフリック入力の出番である。キーボードに比べ入力速度は格段に落ちるけれど、五十の手習で練習を重ねユーザー辞書を鍛え込んだ自負だけはあった。
ダラダラと寝ながら記事を書いてみる

───選択肢が無いのだから仕方ない。
直立した状態で記事を書く。いつも通り、千文字以上、二千文字未満で記事を書く。三百文字あたりで指が止まる。疲れて集中力が途切れた。いつもそう、いつだってそう。それでも僕らは挫けない。
───続行だ。
左手にはiPod touch、親指一本で入力を続ける。しかし、1対10。到底10本の指には敵わない。それでも、ガリガリと親指を動かす。たかが千文字、されど千文字。今時の若者なら苦もなく打ち込んでしまうのだろう。今時の小学生なら苦もなくやってのけるのかも知れない。無様に、不器用に、辿々しく、僕は親指を動かし、そして息絶えた。
───嗚呼、疲れた。
立つ事にも、フリック入力にも疲れた。休憩と称して炬燵の中に潜り込む。仰向けでは痛くて辛い。神経直撃の痛みが電気ショックのよう。こりゃ堪らん!。ヨッコラショと横向きになる。ベスポジを見つけてからiPod touchを手に取り執筆を再開。
何かが変わった。
───あら、楽じゃん。
楽ちんじゃん。
炬燵で寝そべりながらのフリック入力は快適だった。下半身が重力から解放された。指先だけに意識を集中できた。それは、息子がいつもスマホでLINEをやってるスタイルだった。かつて、目にするだけで気に入らない姿勢だった。
しばらくすると腰の上で愛猫サヨリが居眠りを始めた。暑い、重い、でも可愛い。ずっしりとした猫の質量を感じながら、最後まで僕の親指が止まる事はなかった。
───これ、良いかも。
調べ物や裏取りが不要なら、これはこれで快適だ。入力速度は速度は上がらないけれど、未熟な僕に伸び代はいくらでもあった。昨年、屋島山上で練習した頃と比べれば随分と速くなったと実感できた。横になっていると、集中力が持続される事も分かった。寝落ちの危険性と同じくらいに。
───お行儀は悪い。
見てくれは悪いけれど、更新が止まる事態だけは回避出来そうだ。気づけばアラ還の仲間入り。これからの人生、目、足、腰、頭が徐々に使い物にならなくなる。その日はゆっくりと確実に訪れる。
───歳を重ねると言う事はそう言う事なのだ。
腰の痛みが落ち着くまで、炬燵で寝っ転がって記事を書こう。身体が不便な今こそフリック攻略のチャンスなのかも知れない。
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