───ほうれん草が発芽した…らしい。
全ては次の夏の為に。
トマトとキュウリを植えるべく、せっせと雑草やら、落ち葉やら、爆発したスイカやらを撒き散らかしすと勝手に畝が出来上がる。そこをスコップで掘ってみると、土が良い感じにも見えた。そうなると欲が出る、何か植えよう。霊長類代表のただのおっさんのよくある行動パターンである。
───ダメ元で、お試しガチャやってみよ。
サクっと畝の形を整え、手持ちの細ネギと小松菜とほうれん草の種を蒔いた。台風14号が過ぎた翌日の出来事である。
小松菜の発芽は何となく分かる。すじ蒔きしたとおりに芽が出ているのだから、たぶん、これは小松菜で間違いない。
その一方、細ネギとほうれん草はよく分からん。雑草なんだか本丸なんだか皆目見当もつかない。様子見が最善の策であろう。もしかしたら、本丸の芽なんて発芽してないのかも知れないのだから。写真を撮影してしばらく放置する事に決めた。
───さわらぬ神に祟りなしである。
苺は元気に葉を天に伸ばし、大麦は勝手に成長を始める。じゅんこ、ももえ、まさこの発芽率は芳しくないものの、こちらもしばらく様子を見る事になるのだろう。9月とは思えぬ日差しが痛い昼休みである。
───苺買ったん!。
同僚のワーチャンが苺に喰いついた。もうダメだ、スッポンのように喰らいついて離れない───大玉植えよう、大玉植えよう、と煩いものだから、「苗とハーベリーポットを提供してくれるのなら置いてやる、土を買って、水をやって、追肥まで僕がするのだから当然の事だろう?」そう言うと、口を尖らしながらスマホを取り出し何やら話し始めた。
───こんにちはぁ。この前の苺、そうそう徳島の。あの苗、手に入らんかな?。
本気だった。
幾らよつぼしが四季成りだとしても、ワーチャンの胃袋を満たすにはほど遠い。ハーベリーポットを置ける場所もあるから、物量戦もありっちゃありである。そんな事を考えているとワーチャンは電話を切った。
───他に何植えた?。
えっ、苺は?。
話題の変化がイチイチ北斗百裂拳。僕の反応がついていけない。面倒なのでスマホを差し出すと、小松菜は密デス!とか、麦は元気デス!とか、芋掘りいつ?とか言い始める。一方的と書いてワーチャンである。
しばらくすると、
───ほうれん草の芽も出てるやん?。
出てるの?、ほうれん草。それ、ポパイが食べたら強くなったり、トッケビで赤い服のお姉さんがくれたやつだよ、マカロニでも無い方の…マジで?。
ワーチャン談によると、ほうれん草の芽は細い双葉がしゅぅ〜っと伸びるそうだ。さすがは元自家栽培家。野菜の事は何でも知ってる。僕の物差しでは測れないものを持っていやがる。今は食文化の専門家だけれど。
───はいはい、こんにちは。で、苺の苗はどうだった?。
あ、苺に戻った!。
かれこれ40年以上のつき合いだけれど、未だに僕はこの人が分かりません。今はキウイの話で秋桜満開で、今、アナタ、誰と話してんの?。
───シカトだった…。
と言うことで、ほうれん草の芽が出たようで、サヨリは今日も元気です。
───で、苺の苗はどこ行った?。
コメント
徳島の苺。食通が狙うなら、多分あの子。新品種デビューして、初売りの時に一箱10万だった苺ちゃん。ちびまる子ちゃんの作者とよく似た名前の‥。はっきり名前を書いて確認したいけどダメだよね?。今後の記事ネタかもしれないもの。でも、もしかしてあの貴重な苺?と思うと、気になって仕方ないです‥。
こんにちは。
お気遣いありがとうございます。
ワーチャンからの反応が途切れたので(シフトが違うので滅多に会わない)話は頓挫してますが、ももいちごとか言ってた記憶があります。おっきいの、おっきいのって言ってました。徳島では入手出来ないらしいので諦めるかどうかは本人次第ですね(汗)。
お姉ちゃんの方ですか‥。私が思ったのは、さくらももいちご、でした。ハズレちゃったけど、ある意味、安心しました。貴重な苺の苗なので、電話ひとつで入手できたら、むしろ怖い‥というか。もしかして、さくらももいちごって思って興奮しちゃいました。ごめんなさい。
僕の中での栽培難易度は、スイカ<メロン<イチゴの順番で美味い=高価=難しいの方程式が出来上がってます。なので、イチゴの事はよくわからないのですが、イチゴの世界も奥深いんですね。大きなイチゴに興味はありますけれど(汗)。