───今日は暑いのでぶっかけ冷で。
うどん屋まつはま来店は寒さが染みた1月以来。込み合う前を狙ったけれど、すでに軽く行列が出来ていて、相変わらずの人気ぶりだった。調理が全く間に合ってないようで、厨房からドタバタした空気が感じ取れた。
───麦の花言葉は、希望。
おいしいうどんへの希望を胸に、お行儀よく順番を待つ。その前にメニューを決めないと。肉(大)、肉ぶっかけ(大)、温玉肉うどん(大)…。いつもなら肉系で攻める僕だけれど、多忙だった年度末からの疲労が抜けないし抜けきらない。
───今年の3月の忙しさは異常だった。
新年度が始まった途端、溜まりに溜まった疲労が一気に爆発。つまり、食欲が無くてガッツり喰えない。こんな時は無理は禁物。あっさり行きたいから冷たいうどん。まつはまの麺は多めだから1玉もあれば十分だった。ぶっかけ冷(小)。そう、僕の胃袋が言っています。
今日のうどんは奢りだったのに…。
───奢りなのに頑張らない僕の胃袋。
誘って良いのは、奢る覚悟のある奴だけだ。僕の仲間内では誘ったやつが奢る掟。それは昭和の昔から続く暗黙のルールだった。無料の花言葉は、僕大好き。不幸にも、今回は僕が誘われた日であった。たぶん、先日のシュークリームのお返しなのだろう。
あと数日先なら、体力が回復したら、胃袋が全快なら、温玉肉ぶっかけ冷(大)をお見舞いしてやれたのに。そう思うと少し残念だった。
食欲は無いのだけれど、うどんだけでは物足りない。エビ天、芋天、たまご天、ズラリと並ぶ天ぷらオールスターズの中から、僕は無意識にコロッケを取る。うどん屋で天ぷらを取る瞬間、僕はいつも思う。
───うどん屋の天ぷらは、全部まとめて天ぷらつーってるけれど、コロッケとか、スコッチエッグとか、鶏肉揚げとか、これらはカツじゃね?。
どう言うわけか、うどん屋のトッピングは全て天ぷらカテゴリに属している。そして、今までそれを突っ込む話題を耳にした記憶がない。香川県民はそれを天ぷらだと受け止めているのだろうな。だったら仕方のない事だ。毎度、そんな事を考えながらコロッケばかりを選んでいる。
コロッケと高校時代の学食
うどん愛は持ち合わせているのだけれど、コロッケ愛はそれほど。けれど、コロッケばかりを選んでいる。いつもそう、いつだってそう。そのチョイスには、高校時代の学食が根底にあった。
高校の学食のメニューはうどん、カレー、定食の三種類だった。それだけだった。後は菓子パンだけれど、それは二時間目の終わりの休憩時間に姿を消す。菓子パンは奪い合いに近い存在で、その争奪戦に参加した記憶は一度も無かった。その一方、僕にとって日替わらない定食はお金持ちが食べるものだった。だから、いつもうどんを啜っていた。ちなみに、学食のうどんはセルフである。
───高校三年間で定食を食べたのは10回くらいか…。
その定食は、キャベツの千切りと2個のコロッケ、ごはんと味噌汁である。値段は300円だったろうか。無垢で阿呆な少年には、十分ゴージャスに見えたものである。希につき合いで定食を食べたのだけれど、控えめに言っても旨いとは思わなかった。値段が旨いと錯覚させただけだった。
毎回、そんな事を考えながら、うどん屋のコロッケにソースをかける。それも高校時代に学食で覚えた。友達と同じように食べて以来、ずっとコロッケにはソース派だ。何もかもが眩しく見えて、明日に期待した、懐かしい高校時代のマインドが蘇るからなのかも知れない。
───つまりは景気付けである。
この歳になって考察すると、公立高校の学食なのだから、もっと、こう、ボリューム満点でも良かっただろう。せめて250円が妥当な価格設定だとも思えた。飢えた男子高校生にはパンチが足りない。
───キャベツの花言葉は、利益。
そういう事ですか?。
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