コノシロの魚群キタ!!!

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釣り竿
雑記・覚書き

───なんだ、なんだ、なんだ!!!。

船着場に集まるオヤジたち。やる事ないからやるっきゃない!。その尋常じゃない空気に小学生だった僕らも追従する。群衆から発せられる野太い声に空気が揺れた。何が何だか分からない。でも、もの凄い事が堤防の向こう側にある。それだけは確かなようである。得体の知れない不安と恐怖。それにも増して好奇心が小さな身体を突き動かす。数秒おきに貞治がホームランを打ったかのような歓声が巻き上がる。途轍もない事が堤防の向こう側にあるに違いない。

───あっこ、隙間があるで!。

誰かの声。そこを目掛けて条件反射で突き進む。そこに脳信号が付け入る隙など無かった。森羅万象、無我の境地。本能だけが僕らの体を支配した。小3ひとりが入れるスペース。僅かな隙間に数人のガキが頭を突っ込といつもの海が異彩を放つ。

───海が光ってる!!!。

昭和の瀬戸内である。透明度の高い浅い海の底が見えない。今に限って底が無い。蠢くようにキラキラ光っているのだ。例えるなら、手のひらサイズのスプーンが群をなして移動してるような感じである。太陽の反射光が海面が踊っているのだ。人は大きく想定を越えた場面に出くわすと、その場で呆然として動けなくなる。15の夜はずっと未来。たかだか数年のヒューマンキャリアでは情報認識などおぼつかない。海面で起こっている事実を認識した瞬間、僕らは家に向かって猛ダッシュしていた。少年なら誰だってそうなる。あの速度ならカール君にだって勝てたであろう。

───魚、魚、魚の大群。

何だか知らない。でもデカい。釣り道具は海の子の嗜み。魚群には竿だと決まってる。あの大群である。石を投げても何かに当たる。エサなどいらない、引っ掛けだ。糸の先に3本のフックが付いた引っ掛け針を括り付けて息を切らて堤防に戻ると、オヤジたちはすでに針を投げ込んでいた。その中にオトンの姿も。

───家のバケツ、全部持ってこい!!!。

金魚すくいを始める直前、ポイを奪われた気分であった。目の前でジャンジャンバリバリ釣り上げられてゆく魚たち。マリンちゃんさようなら。恨めしそうにゴーホーム。家の納屋から3個のバケツを抱えて戻るとオトンのバケツは魚で溢れていた。バタバタとバケツの中で跳ねる魚。その正体はコノシロという名の出世魚である。寿司ネタのコハダが大きくなったやつ。それに紛れてボラの姿も。こうなるとバケツが意味を為さなくなる。こんなに沢山入らない。だってしょうがないじゃないか!。心のえなりが小声で呟く。

───こっちこっち。

何処からともなく誰の仕業か風呂桶登場。釣った魚をバケツに入れて、それを桶の中に放り込む。もはやテレビでよく見たカツオの一本釣り状態。メインはコノシロであったのだけれど、ボラとアジとイワシの姿もあった。魚群祭りにキャッキャと魚を運ぶ小学生。その姿にオヤジらはこう思っただろうな、息子らはチョロいな…と。

僕らが竿を握ったのはオヤジたちが釣りに飽きた後からだった。魚の群れが通るのは長くても20分程度である。普通ならそれが限界。けれど、この年の魚群たるや凄まじく、その勢いは三日三晩続く事になる。朝から晩まで釣れっぱなし。そんな経験は最初で最後。散々、コノシロ釣りを満喫した3日間であったのだけれど、それは地獄の始まりで、今日もサヨリは元気です。

───えー、今日も。

冷蔵庫は魚でパンパン。コノシロ地獄が終わらない。毎日、コノシロの三杯酢。あの日以来、コハダもコノシロも買ってまで食べる事は無くなった。それは遠い昔の昭和の出来事。それだけで、一生分のコノシロは食べたと思う。

コメント

  1. へぇ~、凄い!凄い!。釣りは好きだけど、入れ食いなんて経験はないもの。やっぱり瀬戸内は豊かですね(笑)。私も釣りは好きだけど、母が「海は1人で行っちゃダメ!」とキツく言うので川釣りばかり。心の中で、子供じゃないのに‥危険要素は同じなのに‥海の方が近いのに‥といつも思います。川でたまに、ウナギが釣れても「そんなのどうするの!」と怒られて、1人で鰻と悪戦苦闘の末に上手くさばけずに筒切り。頑張って料理して味は悪くないのに、見た目の悪さで誰も食べてくれない。皆、鰻は開いてないとダメなんだって‥。やっぱり海はいいなぁ。キラキラ綺麗だし、このしろ釣ってみたいなぁ‥しみじみ思いました。

    • 今は全然だけれど、コンビナートから原油が流出するまではタイやヒラメ以外は雑魚でした。今では細魚でさえもが高級魚でスーパーで魚を見るたび未だに小学生時代の海が思い出されます。ウナギ、良いでよね〜。筒切りにして焼いても味は同じなのにね。てか、天然モノだからそっちが美味いに決まってる。近くに住んでいるならご馳走してもらえるになぁ。勿体無い(笑)。

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