───2022年、去年の寅年。
大空に浮かんだ雲に竜の姿を僕は見た。
それは、自家菜園を始めた初日の話。それを皮切りに、友人との距離が大きく縮んだ。友人は、僕のブログの読者であった。僕と友人との距離を縮めたのは、竜ではなくて畑の方。偶々偶然、友人が自家菜園をしていたのだ。その知識とキャリアは、プロの域に達していた。否、野菜の研究者と呼ぶべきか?
突然、始めた自家菜園。それに友人は、少し興奮気味だった。コロナ禍、桃畑、オカンの怪我……偶然の要素が重なって、畑に着手した僕だって驚きが隠せなかった。
……こんなことって、ある?
スタートが遅れた菜園で、トウモロコシの実を収穫する頃。突如、友人から小説の提案が浮上した。
雉虎さんの小説が読みたい……。
僕は快諾し、その日のうちにプロットを立ち上げた。そして失敗した……。そのプロットは、コロナ禍において微妙な内容だった。僕は、世界を巻き込んだ陰謀論を書こうとしていた。陰謀論とSFとをミックスしたような内容だった。
こんなので構いませんか?
僕は友人へメールを飛ばした。題名すら決まってないけど、こんな感じのお話である。
久しぶりに親父と会った。俺は、親父の顔を見て絶句した。とうに50歳を越えているはずなのに、親父の姿が幼いのだ。どう見ても、中学生……。そんな親父が、ご機嫌な顔でビールを飲んでいる。
「何があった?」
呆気にとられた俺が話し掛けると、親父は笑顔でこう言った。
「知らん!」
それは、コロナパンデミックの出来事である。世界中で老人が若返る。そのニュースに、スポットが当たり始める少し前。弟のような容姿の親父と俺は、一晩酒を飲み明かした。それが、親父を見た最後の姿。
2億もの金を残して親父は消えた。
親父の異変と失踪の裏には、ワクチン接種が絡んでいるらしい。都市伝説系ユーチューバーだった俺は、親父の足取り調査を開始した。その先に、世界規模で行われた人体実験があるとも知らずに。親父の若返りの裏。そこに、RNAワクチンの副作用があったのだ。
多くの犠牲者と引き換えに…。
その1年後。俺は見つけた……若返った人達が収容された研究施設を。そこで、何が行われているのだろうか……? でもそれが、きっと上流階級からの要望なのだろう。
この実験は、不老不死への足がかり……。
みたいな。
当時は、その内容がデリケート過ぎて、友人からの助言で一端白紙になったのだ。普通に考えればそうなるだろう。話が壮大過ぎて、書き上げる自信がなかった僕は、少しホッとした気分になったのを覚えている。実はその前段に、主人公の親父はタイムトラベルをしているのだから。小説素人の僕に、纏められるワケがない(汗)
平々凡々。
その言葉が僕にはお似合いだ。そんな僕の周りで、静かに動き始める何かの足音。それを感じた年でもあった。
竜の雲から何かが変わった。
───2023年、今年の兎年。
僕の今年の一文字は「飛」である。あらゆる意味で「飛」であった。僕の人生に新たな人物が現れた。後に相棒と呼ぶ人物との距離。それが、一気に縮んだ年でもあった。
ブログに竜の記事を書かなければ、僕が彼と出会うこともなかっただろう。きっと、大空を飛ぶ竜が、僕らを引き合わせてくれたのだ。だって、相棒は友人の知人だから。そう考えた方が自然である。
友人の望みを叶えよう!
相棒の力を借りて、僕は二本の小説を書いた。『邂逅』と『のんちゃんのブログ王』である。物語を書きながら、何かの力に導かれる感覚があった。既に書くのは決まっている。そんな感覚というべきか。
僕にとっては、飛の年。それは、不思議という言葉で片付けられない事象の連続だった。きっと、それも序章に過ぎないのだろう。
こんな話を書いている僕だけれど、占い、予言、スピリチュアル……僕はそれらを信じない。それでも、竜の雲から不思議体験の連続で、今日もサヨリは元気です(笑)
───2024年……来年は辰の年。
竜を見てから最初の辰年。
未来のことなど分からない。でも、何かが起こる気がしている。ザワザワとした予感を感じながらも、年末だから昭和の想い出話を書こうと思う。それは、遠い昔の僕の願望。そして、僕の黒歴史。
あの日、小学生の僕は竜の凧を眺めていた。
それは、レディーボーデンのおまけだった。店先に展示された凧を見て、天に舞い上がる竜の勇姿を想い描いた。それだけでワクワクが止まらない。これが分かるアナタ、そりゃもうお友達です(笑)
あの日、家族総出で商店街に繰り出した。それは、昭和の常磐町商店街。年末の買い出しである。芋を洗うような人の海。ダイエーの地下で食料品を買いあさり、鬼門だった起京堂を通り抜け、衣料品を買うべく寄ったスーパーがジャスコであった。
ジャスコで会えずに僕は遭難した。
───迷子のお呼び出しをいたします……三歳くらいの……
ジャスコ1階。年末の総合受付は忙しい。
今でも僕は覚えている。あの凧が親とはぐれた原因だった。そう、台形をひっくり返したカタチの竜の凧。当時のキャラクター商品は、こどもの目から見てもこどもっぽかった。こども騙しばかりであった。
こんなのが欲しいんでしょ?
そんな感じのデザインばかり。それに反して、レディーボーデンの凧の絵柄はイケイケだった。僕よりも少し前の昭和だった。竜の絵柄が銀幕のスターの高倉健とか、菅原文太の背中のモンモンと似ていた。だから、こども心に欲しくなった。竜に気を取られて遭難したのだ。迷子という名の遭難である。
総合受付の片隅で、数人のこどもが泣いていた。僕は、その中の一員となった。自力で帰ってもよかった。けれど、電車賃を持ってない。寒空の中を歩くのが嫌だった。僕は自ら進んで人生初の迷子になった。
───なぁなぁ、ねぇちゃん。迷子の放送してくれない?
僕は、そんなこどもだった……。
ジャスコ1階。総合受付のガラスの向こう。商店街を歩く人混みと、レディーボーデンの凧を眺めて親を待つ。最悪でも、おまわりさんが連れて帰ってくれるだろう。住所も電話番号も記憶済みだ。
「どこ行ってたのよぉぉぉぉぉ!!!!」
程なくして親が来る。
オトンはあきれ顔で、弟はキョトンとしている。オカンの顔は貞子の形相。それが、恐ろしい竜の絵柄と同じ顔に見えた。
「お正月だからアイスを買って」
「あんたは、アホか?」
僕は余裕をぶっこいて、レディーボーデンを買ってと頼み、秒でオカンに却下される。もう、記憶が薄いのだけれど、家で散々怒られた気がする。
その二十数年後……
スーパーの店内放送から、幼き息子に呼び出される未来があった。
因果応報とはこのことだ(汗)
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