うちの猫は律儀である───義理堅く実直なサヨリであった。
暑い日も、寒い日も、晴れの日も、雨の日も……僕が戻ると寝床から起きて出迎える。それは、必ず実行される。
数年前。
もうダメだと思った頃でも、よろよろと体を起こして僕を出迎えた。
「もう、ええで。しんどかろうに……」
口を酸っぱくして、何度もサヨリに言い聞かせたけれど、サヨリの行動は変わらなかった。ご飯の食べられない体で、毎日、僕を出迎えた。
「これ、食えっか?」
ありとあらゆるキャットフードを試したけれど、サヨリが口にすることはなかった。大好きだったちゅーるでさえも食べようとしなかった。日に日にやせ細る愛猫に、あまりにも僕は無力だった。猫ブログから始めたけれど、それを記事にする気になれなかった。書くだけで滅入ってしまう。
───徐々にブログから、サヨリの姿が薄れてゆく……
サヨリに復活の兆しが見えたのは、マグロの刺身を与えてからである。ビックリするほど食べたのだ。父ちゃん……泣くよ……ってくらい食べてくれた。刺身は高い。人間様でも滅多に食べられない高級食品。けど、それはどうでもよい話だ。
まぁ、この子も長くない。マグロ、カツオ、ブリ、つばす……そんなぶらり散歩気分で、僕は毎日刺身を与えた。金銭的に辛いけれど、病院代よりお安いものだ。
森の石松のセリフのように、呑みねぇ、刺身を食いねぇ~。その勢いで、毎日、スーパーで刺身を買った。一生分食っても俺が許すと言わんばかりに。そして、この生活が2年以上も続くとも知らずに……。
だがしかし、昨今の値上げラッシュに、僕の財布がパンクした。刺身の値段が上がっても、収入が増えるわけでなし。辛いばかりの令和の世の中。それは、アナタも同じでしょ?
背に腹は代えられず、刺身の代用品を僕は探す。
そして見つけたのが、ホムセンのまんぷくパウチであった。今は高齢猫用のゼリータイプ。ホームセンターコーナンのオリジナルが、まさかまさかの大当たり! お気に召してくれたのだ。
まんぷくパウチに切り替えてから1年が過ぎた。
「ただいまぁ~」
今日もサヨリは出迎える。チリンチリンと首の鈴を鳴らしながら、飛んではしゃいで出迎える。抱っこしてやろうか? 撫でてやろうか? それとも、モフモフしてやろか?
「ごわぁ~ん」
今日も猫撫で声を出しながら。僕の足元でおねだり開始。
「食べるんか?」
「うん!」
いつの頃からか、僕と猫との会話が成立しはじめた。あと数年でサヨリも成人式の年になる。人間だったら80歳。この生活が何年続くか分からない。けれど、律儀で義理堅く実直なお出迎え。それが、続くような気がしている。いつまでも。
そう思えるほど、今日もサヨリは元気です(笑)
コメント
飼い主さんの愛情を受けて
サヨリちゃんは幸せですね
相思相愛関係が伝わります
コメント、ありがとうございます<(_ _)>
おじいちゃん同士で仲良くやっています(笑)