痒くなった……耳が痒い。
綿棒を耳に突っ込みグリグリまわすと鼓膜にピリッと痛みが走る。その刺激に嫌な予感しか僕は知らない。
ゆっくりと慎重に、耳奥で綿棒を時計まわすとガサガサな音が聞こえて、今日もサヨリは元気です(笑)
あぁ……これは、前にもあったやつである。きっと、髪の毛が耳穴深くへと侵入したのだ。
さて、どっしようかな?
綿棒では痛いだけである。そして綿棒では埒が明かない。道具を綿棒から耳かきへとバトンタッチ。
僕の耳かきは高級品。まずは、ヘラ型でやってみる……うん、取れない。スクリューの方でもやってみる……マジやばい(汗)
こんな時は何もしないのに限る。
寝て起きたら、髪の毛だって勝手に取れてるかもしれないし。そんなぶらり散歩気分で、右の耳を下に向け、僕は夢の中へと逃げ出した。
いつもそう、いつだってそう。寝たかと思えば、あっという間に朝である。胡蝶の夢はどこへやら。
いつもどおりに布団から起き上がり、いつもどおりに顔を洗って歯をみがく。全てがいつも通りになのに何かが違う。
───ガサガサ……
耳の穴に指を突っ込んで思い出す。まだ耳の奥でガサガサ言うてはる……。軽く“病院”の二文字が脳裏をかすめた。けれど、この程度で休めるほど暇じゃない。
会社では、わいわいバディがお待ちでごじゃる。この男、いつだってカーニバル。明日は我が身。止めたくても止まらない。
そのうち何とかなるでしょう?
その翌日。そのまた翌日も、僕の耳からガサガサは止まらない。何もしなければ問題ない。
けれど、ふとした拍子にピリッと鼓膜に刺激走る。雑音除けのイヤホンだって装着出来ず、ストレスだけが溜まる日々。僕はついに腹を決めた。
オペります(笑)
前回の時はどうしたっけ? あのときは、にゅいーーーんと長っげー髪の毛が耳から出てきた。それは、耳かきで引っ張り出せた記憶ある。でも、今回はそれとは違う。もっと小さな感じがなんとなく。それに見合った道具を探す。
これなんて使えそうじゃね?
ピンセットである。これなら取れそう……そんな気がした。僕はやるけど、全世界のよい子のみんなは、絶対にまねしないでね(笑)
パチパチとピンセットの先を数回合わせ動作を確認。ゆっくりと慎重に、見えないピン先を五感で確認しながらしなやかに。全神経を尖らせながら、見えぬ抜け毛にロックオン───おぉ……鼓膜がガサガサと音をたてる。ピンセットの先が毛に接触。
ちょい右、ちょい左、もうちょい下……かな?
その場の雰囲気だけを糸口に、ピンセットでつかんで引きずり出した───失敗、はずれである。
もうね、UFOキャッチャーな気分でセカンドチャンス。そもそも耳の奥底での作業である。少しのズレで病院直行。何度もやれる作業でもない。さらに増す緊張感。たぶんその時、呼吸すらしていなかったと思う。
ピンセットの先が髪に触れた瞬間、「お願い!」そう、神に祈る。ゆっくりとピンセットを引き抜くと、耳穴のウォール・マリアに何かが触れる感覚に、絶対これ取れたやろ? そんな手応えを感じはじめた。
わたし、失敗しないので(笑)
抜き終えたピンセットの先。こんなん出ましたぁ〜! そこにはクルリとアールを描く短い毛。だれの毛じゃ? そんなの僕のに決まってる。僕はアムロくんや銀ちゃんと僕は同じくテンパだもの。
数日に渡るストレスからの解放の瞬間、ふつふつと湧き起こる嫌な予感。見えなぬ恐怖に煽られる。
これだけか? これで本当に終わったのか?
もう一度、綿棒をゆっくりと耳の奥へと忍ばせる。すると、あの忌まわしいガサガサ音が……。
なわきゃない(笑)
でも、不思議なのは右耳だけ。右の耳の穴が大きいはずもなく、眠る姿勢は天を仰いだ大の字なのに髪の毛に狙われるのは右ばかり。
もしかして、僕の生活習慣の中に見えない法則があるのかも知れない。
コメント
読みながらピンセット怖っ!って
眉間にシワよってしまった。
耳にピンセットは全然大丈夫だけど、未だに目薬を目に入れるのは怖いです(笑)
無事に取れて良かった~(笑)髪の毛って、あるべき場所に生えている時は価値があるけれど、耳でも口でも入ると不快感が半端ない。もうね、食事に髪の毛一本発見しただけでも食欲が失せるから。ほんと、たかが一本、されど一本です。
あんなのが耳奥に入ることもあるんですね。
毛の先っぽが鼓膜に当たると割と痛いでした(汗)