コグマダイエットに確かな手ごたえを感じ始めた11月初頭。マルナカ、マルヨシ、きむら、パワーシティ…。僕は、リーズナブルな芋を求めてさすらった。ちょうどその頃、マルヨシセンターで気になる鳴門金時があった。バスで毎日見かける彼女に、声を掛けたいけれど掛けられない。
そんな存在の芋だった。『木内さんの鳴門金時』である。1本売りで値段もお高い。つまり、高嶺の花子さん。───いつかは木内さんの…。そう思っている間に、木内さんの鳴門金時はマルヨシセンターから姿を消す。
───時期が過ぎたのだろう。
そう思った。来年の今頃になれば出会えるだろう。そうとも思った。そうこうしていると、Twitter懸賞で『芋ぴっぴ。』が当選。二度見した、指が震えた、ミラクルだった。人生、何が起こるか分からないものだ。高級熟成焼き芋のレビュー記事を書いている間に、木内さんの鳴門金時は僕の記憶から薄れていった。
12月に入り、さつまいもコーナーにあの籠が戻って来た。もしやと思い確認すると、木内さんの鳴門金時が籠の中で待っていた。やぁ、元気?。俺のこと覚えてる?。
───毎日あるならいつでも買える
そう考えていたけれど、一度、スーパーから姿を消すとレア度も上がる。見る必要はありません。考える必要などありません。僕は木内さんの鳴門金時をレジカゴに放り込み、鮮魚コーナーへと足を進めた。レジの前で並ぶ頃。
カゴの中で、愛猫サヨリのお刺身と木内さんの鳴門金時が仲良く並んでいた。
木内さんの鳴門金時を蒸してみる
───木内さんの鳴門金時は昭和の味がした
僕は芋を蒸して食べる人である。スチームクッカーに水を入れてタイマーをセット。チャングムを見ている間に蒸し上がる。これが最も楽なのである。
蒸した芋。初めての芋は出来立ての熱々を頂く。二回目以降は冷蔵庫で冷やした芋のを酢水と一緒に食べる。熱々の方が美味しいけれど、冷やした方がダイエット向き。そう言われるのだから素直に従う。ただ、芋のスペックを試す為には熱々で食べる必要性があった。
───最初は最高の状態の芋を食べたい
蒸し上がった芋を、いつものように半分に割る。写真撮影も忘れない。フーフーと息を吹きかけながら一口頬張る。甘い?甘くない?。そこが注目だけれど、木内さんのはそこじゃなかった。その味は、小学生の頃に食べた焼き芋の味がした。
ランドセル、夕暮れ刻、手付かずの宿題、寒い。すっきりとした甘さは、僕の記憶を呼び覚ます。そう、それは、風呂焚きをしながら食べた味。こんなお芋さん、あったよね。どこか懐かしい素朴な味がするサツマイモだった。
舌先で感じられるものには限界があります。芋の甘さからの刺激と過去の記憶。それがアクセントとなって素晴らしいハーモニーを奏でます。香りや舌触り、甘味、渋み、荒井由実。BGMには卒業写真。
───悲しいことがあると♪開く皮の表紙♪
卒業写真に想いを馳せる。開くのは芋の皮。新御三家、花の中三トリオ、80年代アイドルたち。ノストラダムスの大予言を生き延びた、僕らが感じる味わいと、ニュージェネレーションが感じる味わいに、大きな差はあるのだろうか?。
そんな事を考えさせられるのも不思議です。
───サツマイモも人生
そういう事です。
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