台風で知った、ドコモスマホとａｕスマホとの差

───２０２３年６月２日。

　僕らはドコモとａｕとの差を知った。

　昨夜から続く雨。どこかしこも朝から台風２号の話題で持ちきりである。とは言え、外は雨だけである。見事なまでに一直線に落ちる雨粒が水たまりに花を咲かせる。ライダー２号は好きだけれど、台風２号には困ったものだ。無風なのが救いであった。これなら畑の心配も無いだろう。カッパを着込んで仕事に向かうと、案の定、国道筋は大渋滞であった。

　いつもそう、いつだってそう。ここぞとばかりに左寄せするドライバー。進める道が進めない。進めるのに阻まれる。ねぇ、ねぇ、バイク、嫌い？。それとも、運転、下手くそ？。慌てる気持ちをグッと抑えて、今日もサヨリは元気です。

───この人は、気の毒な人だ。

　そんな時、僕はこう思う事にしている。そう思う事でイライラ気分を中和する。この方法は割と効果ある。哀れみの目で自動車を見つめ、慈悲の心で信号を待つ。ＢＧＭには大音量の謎の音楽。ガラス越し、目に飛び込むドライバー。その首が激しく上下に揺れていた。これがヘッドなんちゃらか……首の骨が折れそうだ。息子ほどの若者だから、余計に少し心配になる。

───後々、首は辛いぞ。

　この渋滞で到着予定よりも５分送れた。でも、問題ない。平常運転で作業を始める。この雨である。桃の摘果など出来やしない。今日はペースを落としてゆっくりやろう。老体にはこんな日も必要だ。お昼ごはんは、友達からもらった、大きなトウモロコシを蒸して食べよ（笑）。

　仕事を始めてから２時間が経過した頃。僕のスマホから、聞いたこと無きメロディーが鳴り響く。何だ、何だ、ミサイルか？。そんな感じのメロディーである。作業場で緊張感が走れメロスくら爆走していた。

　僕は手を動かしながらも聞き耳を立てる。メロディーが鳴り止むと、お次はスマホが喋り始めた。へぇ、僕のスマホって喋れるんだ。何この未来感…。その新たな発見は、緊急速報メールであった。そのメールをスマホが読み上げていたのだ。賢いなぁ、でも、高齢者、高齢者、高齢者。僕のスマホは、どんだけ高齢者と連呼するのだろう。『高齢者の方は』だけが耳につく。

───えーそこ？。

　避難地域は、ここから２０キロ以上も離れた場所であった。こういうのは、広範囲に渡ってお知らせしていのだろう。身近な危険が去ってホッとしたのも束の間。

「おじいちゃんのスマホは喧しいのうｗｗｗ。おじいちゃんスマホはそうなんか？。それ、らくらくスマホか？。俺のはそんなの言わないでｗｗｗ。ＧＰＳ設定してないんか？。おじいちゃんスマホｗｗｗ」

「うっせーわ、じいちゃんちゃうわ、１円スマホだし！」

　おいおい、そこの同級生が何を言う？。キミのスマホは無反応じゃん。それこそ電源が入ってんの？。電波切れたか？、金払ってっか？。そんなの鳴らないよかマジじゃろて。気の毒な人がここにもいた。

　僕のスマホが静かになった。暫くしてから鳴り始めた彼のスマホ。それは、僕のと同じメロディだった。キミのスマホも僕のと同じおじいちゃん。ふたりで腹を抱えて大笑いした。

「ところで、うちのはドコモだけれど、おまいさんのスマホはauだったかな？w」

───これが、ドコモとａｕとの差である（笑）。