───決めつけ、思い込み、先入観。
それは前記事からの続きである。
脳内にあるノイズを全て一掃し、激重ノートPCの原因を考察する。そう、ぶらり散歩気分で頭を突っ込んだら、首ごと抜けなくなったFUJITSU製ノートPCの一件である。やる事は全てやった、やるべき事も全てやった。持って帰れたら話が早いのだけれど、それは出来ない。相手側の日常業務に支障が生じて非常に具合が悪いのだ。
現状もPC問題は一旦保留し、僕の手持ちのPCを持ち込んで業務続行の策をとる。PCからPCへの業務移行作業は2回目だ。ノロノロと動くFUJITSUくんを購入した時に先代PCで経験済みだった。Core i7の鳴物入りでやって来たフレッシュ時代が懐かしい。それと同時に引退した先代マシン、Windows7で動いてたっけ?。
「前回、見てもらったのは5年前でしたっけ?」
「そうですよね、まだ動きそうなのに」
「ねぇ」
「ねぇ」
移行作業を進めるアラフィフとアラ還。
この時点で既にフラグは立っていたのだ。
僕は文章化して作業手順を手をかけたPCに残す癖がある。それは未来の自分に宛てた手紙のようなもの、未来の自分が困らぬように。記録に従い経理と発注と在庫管理を移行する。専用アプリは経理と在庫管理。発注はウェブ経由なので考える必要すら無かった。あとは年賀状ソフトや印刷物の雛形程度。作業時間は小一時間。つまり、楽勝な案件だ。
───並行して激重FUJITSUくんの様子も伺う。
アプリを起動させるのにも、ファイルを開くのにも、フォルダを開くのでさえ手待ちが生じる。昔はあんなにキビキビ動いていたのに、今では何をするのにも手間の掛かる子になった。その癖、ネットサーフィンだけは快適に熟す不思議ちゃん。
「誰にでも優しくしなさい。お父さんは、そんな子に育ててなどいませんよ。Microsoft Edgeだけには心を開くなんて悪い子だ」
心の中でボヤいてもFUJITSUくんのポンコツ具合は変わらない。アプリを起動させるのにも、ファイルを開くのにも、フォルダを開くのでさえ手待ちが生じる。
───持って帰ったら説教部屋直行だな。
FUJITSUくんの中のデータを見て絶句する。背中に流れる嫌な汗。違和感というより、嫌な予感というやつだった。もしかしたら、僕らは大きな間違いをしているのかも知れない。実際、もしかしたらじゃ無かったのだけれど。
オヤジの毎日はミステリー
───2010.6.17
マジか…。
問題はパソコン云々では無かった。FUJITSUくんがやって来た日。その日の記録は、2010年(平成22年)6月17日に過去の自分が残したものだった。小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還した年で「龍馬伝」や「てっぱん」を放送してた頃の記録だった。翌年アナログ放送が終了する事になる。
───この子、2010年に来てますね。
知ってる、それ嘘でしょ!。
お互いにそう言いたかったに違いない。だってそうでしょう?、今までの会話の時間軸のズレが大き過ぎる。浦島太郎にでもなった気分だ。
「買い替えですかね」
「買い替えですね」
FUJITSUくんは12歳だった。決めつけ、思い込み、先入観、それより何より恐怖が走る。あの日から12年の月日が経っていたのだ。それは、キジとらを始める6年も昔の出来事だった。もうね、僕らの記憶の画素が荒い。僕らは目を合わせて身震いし、ジャネーの法則に恐怖した。
若い人には分かるまい、時の流れの恐ろしさを。
───それでもFUJITSUくんは治すつもりだけれど…。
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