短編小説『邂逅』

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短編小説『邂逅(あとがき)』

タビーとはキングの妻の名前である。ゴミ箱の中のボツ原稿を拾い上げ、面白いからとキングにタビーは原稿の続きを書かせようとした。しかし、主人公は思春期の少女。その微妙な心情を描く事が彼には出来ない。当たり前だ、男だもの。それを妻に告げると『私がここにいるじゃない』そう彼女は微笑んだ。これが、後にモダンホラーの帝王と呼ばれる男の門出となる。
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短編小説『邂逅(012邂逅)』

邂逅という言葉がある。偶々うまく巡り逢う意である。偶々うまくこの時代に生まれ、偶々うまくこの場所に引っ越し、偶々うまく少女に声を掛けられた。でも、偶々うまく彼女の望みを叶える事は出来なかった。
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短編小説『邂逅(011輪廻転生)』

斉藤はアタリだった。オレのミッションは生まれ変わった曾お爺ちゃんを探す事なのだ。輪廻転生に科学的根拠があるのなら、突破口だって見つかるさ。
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短編小説『邂逅(010新戦力)』

まほろばからの帰り道、オレたちは腕を組んで家に戻る。いつも笑顔で接してくれるリンだけれど、今日は、いつも以上にご満悦だった。とは言え、天才が有頂天になると、これでもかと話しかけられる。彼女の速度についていけない。クロップアップ度半端ない。それでも彼女の口は止まる気配をみせなかった。これまで秘めた想いを爆発させたような勢いであった。
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短編小説『邂逅(009ブログ王)』

感動的な場面だった。誰が見てもそう感じるであろう場面である。それを見ながら冷静さを取り戻たオレは、サイコパスなのかも知れないな。ふたりの会話が途切れるまでオレは待ち口火を切った。
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短編小説『邂逅(008まほろば)』

人は生き死にを繰り返す。それを輪廻転生と呼ぶ。そのご都合システムをオレは全力で否定していた。リンとの芋掘りの後、オレは曾爺ちゃんのファイルを読み返した。何度も何度も読み返した。読めば読むほどあの人がリンと重なる。百歩譲って輪廻転生したとしよう。でも、現世に曾爺ちゃんが居なければ、彼女の人生が無駄になる。それが余りにも不憫に思えた。
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短編小説『邂逅(007お月様)』

夏休みのはじめ。妹が東大へ行くと宣言した。幼いながらに真っ直ぐな目をした宣言であった。兄として、止める理由が見つからない。あの脳天気だった妹を、リン先輩は半日で覚醒させてしまった。夏休みの宿題は早々に終わらせて、こっちが宿題に追われ始めた頃。高一レベルを遙かに越えたドリルを熟し始めていた。一緒に夏休みの宿題を始めた妹の同い年は、いつしか妹の家庭教師になっていた。あれから図書館の自惚れやさんと未だに一度も連絡を取ってはいない。
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短編小説『邂逅(006自惚れやさん)』

オレは、嬉しさと恐れの狭間で朝食を取っていた。パンと、牛乳と、ベーコンエッグ。それに畑で採ったばかりのプチトマトを添えて。
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短編小説『邂逅(005お兄ちゃん)』

レンタル畑に真っ赤なテント。そこから突き出された双眼鏡が異様であった。それに加えて拡声器である。甲高い共鳴音が耳を刺す。お願いだ、それ以上は止めてくれ。早朝6時の閑静な住宅街。それだけは迷惑千万。オレは条件反射で手を横に振った。
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短編小説『邂逅(004コメント)』

平安の世でも、古代ローマ帝国の世でも、2072年の世でさえも。人間の営みとは同じようなものである。如何に科学が進歩したとて、男女の関係に大差は無い。この先もずっと、同じ事で悩み、苦しみ、喜びを感じて行くのだろう。未来永劫、恋愛システムに人類は翻弄され続ける宿命なのだ。
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短編小説『邂逅(003ブログ)』

初夏の風が頬を撫でた。大きな黒目に萎縮した。それは、何かなら何まで見透かしたような目であった。『リンと呼んでね』そう、彼女は言った。けれど、オレの立場ではそうもいかない。残念ながら、オレは『リン姉さん』と呼ぶべき立ち位置であった。
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短編小説『邂逅(002天才少女)』

それはウソである。オレの前の美少女がそれを証明していた。とは言え、どうやってこの場を切り抜けよう。女子慣れしていないだけにマゴマゴしてしまう。
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短編小説『邂逅(001パンドラの箱)』

日曜日の朝。部屋のカーテンを開くと富士山が見えた。デッケーなぁ、カッケーなぁ。富士の美しさに目を奪われていると、隣の家から女の子が出てきた。ボブカットに作業服。肩に担いでいるのは釣り竿らしい。自転車で家から20分ほど走ると海があるとか。