新作は、人類を滅亡させます。

小説始めました

 新作小説に行き詰まった。

 何度やっても、どうやっても

 幼女の存在に整合性が取れないのだ。

 いっその事、人類滅亡させてしまえ。

 日常を描くつもりのプロットが崩壊した。幼女の設定が決まらない。実体化させてもさせなくても、主人公を大人にしても子どもにしても、今の日本では存在できない。どの道を歩ませても整合性が取れないのである。令和の管理社会で、この子を生存させることが出来ない。

 それでも、物語を進める間に、何かの案が浮かぶであろう。その考えは甘かった。世の中そんなに甘くはない。

 だってそうでしょう? 実体化させれば、両親の存在は必要不可欠。その子を、あかの他人が連れて歩こうとすれば、男女問わず問題が生じる。道端で出会った幼女を勝手に連れ歩く事は不可能なのだ。うどん屋で飯を喰うだけで、即、お縄。それがたとえ小説だとて同じである。

 書いている人間が違和感を感じているのだ。それは無いと。そのモヤモヤはダイレクトに伝わるのに決まってる。

 幽霊とか妖怪とか。その設定に変えても無理がある。人ではない存在の存在証明が僕には出来ない。それらを振り切った作品は幾らでもある。書こうと思えば書けなくもない。キャラの魅力で逃げ切れるのかも知れない。けれど、自分が納得できないのだから、それをやるべきではないと思う。

 まぁ、ぶっちゃけね、下手すりゃ変態ロリコン小説になってしまう。それは不味い。可能な限り、仕事をしながでもトライ・アンド・エラーを繰り返した。何度やっても無理は無理。僕の中で何かが切れて、今日もサヨリは元気です。

 幼女の案を白紙に戻そう。

 かれこれ、この三月からキャラ付けを始めた幼女である。名前、年齢、性格、口癖と裏設定……。最終形態は海辺の幼女。テテテテテと勝手に動く幼女を断腸の思いでボツにすると、これまで培ったプロットが音を立てて崩れ落ちた。ガタガタだ。その瓦礫の上に立った僕。何の策も持ってはいない。一面に広がるのは焼け野原…。

 新たな一手が浮かばねぇ。

 それでも何か無いかと考える、けれど、やっぱり何も浮かばなかった。そもそもが、この小説は友人への誕生日プレゼント。小説が出来なくても、誰からもとがめられる事もない。自分でもよく頑張った。元から僕には小説の才能なんて無かったのだ。軽く諦めに似た感情が顔を出し、ふと、思ったのが焼け野原…そう、世界の終わり。

 小説家とは、ある意味で神様。

 友人も相棒も同じ事を言ってたな……小説家はどんな設定にでもできる神様のような存在だと。どんな世界でも、自由に生み出せる神様であると。

 え?……何でもええの?……だったら……人類滅亡でもさせよかな?

 そこから原案をひっくり返すと、何か違うものが見えてきた。原案では、主人公は巻き込まれる道をたどる。その設定をひっくり返して、こっちから行かせてみるか。むしろ、巻き込むカタチに変えてみようか? 何か出来るかもですよ、これは。

 時間にして三時間。

 僕は新しいプロットを一気に書き上げ、担当さんにメールした。共に歩んだ構想五ヶ月。勝手にそれを白紙に戻し、新たなプロットを飛ばしたのだ。あちらさんにどう思われるのだろう。そんな不安もあったけれど、変更するなら今しかない。私たちには時間がないのよ! 世界のキャンディーズと言うやつである。

 そして、新たなプロットには、きっちりと、物語の発端とラストシーン。目次まで書き上げた。すでに、頭の中で主人公もスタンバっている。艶っぽいお姉様だって手ぐすね引いて待っている。

 エピソードの中身を書けば、小説が完成される状態なのだ。そこまでやって、ダメなら次のを考えよう。時間の猶予はないのだけれど、でも、出し切った感覚ある。そう、腹を括って飛ばせたメール。

 翌朝、担当さんから了解メールが届いていた。ゴーが出た、執筆活動再開だ。

 つまり新作は、人類を滅亡させます(笑)

コメント

  1. 海辺ではないなら、おかっぱの幼女で姿が見えたり見えなかったり…というと座敷わらしを思い出します。聞いた話では、白い美しい座敷わらしは吉兆だとか出世するとか…。そんな種類があるの?と初耳でした。前回の謎の幼女が初登場にして最後になるのは残念だけど人類滅亡、どんな小説になるのか楽しみです(笑)

    • 座敷わらしをアレンジしたお話も魅力ありますね。
      この幼女、新作でもちょこっと顔を出す予定です(笑)

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