のんちゃんのブログ王〝021 俺の小説〟

小説始めました

021 俺の小説

 ブログで小説を書く。

 その手法に切り替えると、執筆速度が一気に上がった。今までどおりの調子に戻る。どこまでも書ける気がした。これでいいのか? そんなの知らねぇ。これまでブログで培った俺の全てを小説にぶつけた。ワクワクしながらカブトムシの記事を書いたころのように。何だよ、もう楽しいじゃん(笑)

 その翌週。

 俺は、最後の小説を桜木に手渡した。前回の審査から、俺と桜木の間に会話はなかった。そして、最終審査の日。俺は初めて桜木に頭を下げた。

「桜木。お前の真意は理解したつもりだ。これで最後の審査をお願いします」

 深々と、俺は桜木に頭を下げた。

「分かりました。最後は僕ひとりで判断します。そうですね……今日の放課後。今度は、僕の教室に来ていただけますか? 他のメンバーにも集まってもらいます。あれからどうなったのでしょうね、今から読むのが楽しみです」

 こんなに緊張したのは、高校入試の面接以来だ。今日の放課後、全てが決まる。いつも頭に入らぬ授業が、いつも以上に頭に入らない。そんな授業中、俺の背後で電池の入れ替えに勤しむオッツーがいた。もう、俺は振り返らない。今日は、振り返らずに前を向こう。決して後悔をしないように。

 そして、運命の審査発表が始まった。

「いつもの飛川君に戻りましたね。文章にあなた独自のテンポが戻りました。文と文との間もすばらしい。こういうの、自分で気づけないでしょ? これが、あなたに神様がくれた贈りものです。これがあなたの才能なんです」

「え?……そ、そうなん?」

「でも、小説にも基本があります。それを無視することはできません。アケミさんの指導が花を咲かせましたね。あなたの個性も出ています。これならきっと、かぐやさん、とても喜びますよ。申し分ありません。“まる”です(笑)」

 その時、俺は桜木の顔が歪んで見えた。涙を堪えるのに必死だったからだ。後ろの席で、オッツーが泣いていた。うそやん? ここでお前が泣くのか? 黄昏の公園の日から、今日の最後の審査の日まで……。思えば、オッツーは俺に付きっきりだった。その涙……もうこれは、卒業式で母が流す涙じゃないか?

 俺は、照れ隠しにこう言った。

「何、泣いてんだよ」

「……」

 オッツーは無言でライダーベルトのスイッチを押す。

 ───ギュィィーーーーン!

 原点にして頂点。風に当ててこその変身ベルトが雄叫びを上げる。今までで、最高の効果音を俺は聞いた。俺にとっての正義の味方は、未来永劫お前だよ。後ろの席のヒーローに、俺は感謝の言葉しかなかった。

 俺は審査に合格したのだ。

 かの有名な、なんとか賞とか、なんちゃら賞とか。そんな権威はどこにもない。でも、俺にとって世界で最高の名誉だった。その余韻に浸れる時間を、彼らは俺に与えなかった。俺の審査なんかよりも、彼らにとって、大変なのはこれからなのだ。

 桜木、アケミ、ゆきの三人が、各々に小さな段ボール箱を抱えている。これはアレか? 俺の合格祝いのパーティーでも開くのか? やだよぉ~、照れくさいじゃん。ホント、お前らって、いい奴ばかりなんだから。

 俺は、お前たちと出会えたことを、心から光栄に思っている。俺は素直な気持ちをみんなに伝えた。

「み、みんな。ありがとな」

 俺がみんなに頭を下げると、アケミが吠えた。

 なんでなん?

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