昼休みの間隙に畑の中で穴を掘る。師走の寒空の筈なのに、ニット帽を脱ぎ、ネックウォーマーを外し、ジャンパーをかなぐり捨てて穴を掘る。
昼休みは短い。さっさと終わらせて職場へ戻ろう。スコップの煽り運転の最中に、背中越しの物騒な言葉で手が止まる。
───昼間っから何やっとん?、人でも埋めるん?。
やめてよねぇ、人聞きの悪い。今日はですね、このカボチャの跡地に枯れ葉をおみまいするぞぉ〜、この野郎!。
野菜を植える畝の底。そこに仕掛ける時限爆弾。畝底に枯れ葉を埋めて置くと良いことがあるのだという。それを落葉床と呼ぶのだとか。
うまく行けば2年くらい肥料が要らない畝になると言う。落ち葉は浴びるほど持っていて、鶴首かぼちゃの畝も空いた。カボチャの畝をひとつずらして、空いた畝にはトウモロコシを植えると決めた。足元に広がる大宇宙の浪漫が薄らと見えた。
だってそうでしょう?、場所を取り過ぎなんだよ、鶴首くんは!。
このクラス、来年は席替えをしようと思っています。キミにはひと畝ずれてもらって、キミの席にはトウモロコシくんに座ってもらいます。トウモロコシくんは先に卒業してもらって、残った茎は鶴首くんが好きに使って良いからね。
───妙案である。
とは言え、トウモロコシはギャル曽根クラスの肥料食い。土に燃料を投入して置かなければ、今年の悪夢が再現される。そんな話から飛び出したのが落葉床であった。
地中に落ち葉を埋めると、徐々に落ち葉が分解され肥料切れを起こさない。更に発酵熱で土が暖められる恩恵として、トウモロコシの苗を早めに植え付ける事が可能なのだとか(諸説あり)。
───理に適っている。
一応、理屈は通っている。だったらやろうと一心不乱にスコップを振り回しているのだ。畝の土を掘り進めると案の定、粘土層が顔を出す。うちの畑の水はけが悪い筈である。随分と土を掘り返し続けたけれど、まだまだこんな感じなのだろうな。
───理想の土にはまだ遠い。
10分ほど堀り進めると良い感じの穴が掘れた。そこに落ち葉を敷き込んで踏み固める。落ち葉の舞い散る停車場は、悲しいおやじの吹きだまり。懐かしの流行歌に乗せてしっかりと踏み固め、水を掛けたら埋め戻す。折角なので畝の形に埋め戻して、今日もサヨリは元気です。
───残り時間は20分、まだイケる!。
余った時間で籾殻をまいた。まき散らかしたと言うべきか。温存していた籾殻の袋が3袋。5分もあれば作業は終わる。さっさと始めてとっとと帰ろう。ひと雨来そうな気配だし。
予定通りに作業を始め、予定以上に作業が進んだ。ひと足早い「良いお年を」。そんな気分で簡易ハウスを覗いてみると、白菜・キャベツ・スナックエンドウの芽吹いた姿が確認出来た。
一足早いクリスマスプレゼントをもらった気分である(笑)。
コメント
あっ、可愛い芽が出てきましたね!。嬉しいなぁ‥(笑)。もうね、いつの間にかドキュメンタリーだから、感情移入しちゃう、しちゃう。作業中のニット帽とかけて、海中のサヨリと解く。その心は‥どちらもむれるでしょう。本日もお疲れ様でした(笑)。
お見事!(笑)
冬の畑は変化に乏しくて小さな事でも嬉しいですよね。大きく育ってくれたらいいなぁ。