───そこの雑草、貰ってくぜ!。
僕の畑から坂をバイクで下って5秒地点に後輩の畑がある。逆に歩いて登っても1分と掛からない。スープの冷めない距離である。6月の頃だったっけ?、突如、畑に堆肥を入れ、耕運機で土を耕し、マルチを施し、何が植るのかを見ていたら、そのまま放置プレイでお盆を迎えた。その間、肥えた土壌であるが故に雑草の勢いは凄まじかった。グングンと成長し、漆黒の土壌は緑の絨毯に覆われた。あの土の色が僕が目指す土である。
───毎日でもバケツに入れて、持って帰りたい肥えた土。
腐葉土を入れ、籾殻を入れ、牛糞を入れ、石灰を入れ、化学肥料をぶち込む。その中でも牛糞へのこだわりは異常で、後輩が口を開けばトウモロコシとうんこの関係の話ばかりだった。後輩と同じようにやれば、僕の畑もそうなるのだろう。けれど、あっちはプロでこっちはお遊び。ボチボチやればそれで良い。お盆が過ぎた頃、後輩は黙々と草を抜き始め、僕は雑談を交えて本題に入る。
───そこの雑草、貰ってくぜ!。
え〜よ〜!。
ヘリウムくらい軽い返事で契約成立。まぁ、40年以上の付き合いである。拒否られる可能性は限りなくゼロなのだけれど、勝手に取って帰るのは幾ら何でも仁義に反する。後輩の事だから、気を遣って明日の朝には僕の畑に抜いた草が移動している事だろう。「耕運機貸そうか?」とまで言ってくれたのだけれど、そんなサンタはいらねぇ〜よ。念の為、「自分で運ぶから」と釘を刺してその場を立ち去った。こう言うのは、自分でやらないとダメなんだ。
───雑草とは、人に愛されていないだけの花である。
けれど、この雑草は別物である。肥沃な土で育った草は宝の山。あの土の栄養の塊なのだから。それを廃棄するなんて勿体無い。発酵速度を考慮しても来年の春には十分間に合う。増殖中の光合成細菌の導入さえも厭わない。畝立て予定地に雑草を積み上げ、米ぬかをまき土を被せる。半年後には良き雑草堆肥に仕上がるだろう。数日後、雑草の山も後半戦に差し掛かる。カラカラだった草がしんなりと湿り始め、土に近づくにつれて熱を帯びる。それは、手のひらに温泉を持っているかのようだった。
───底の方では既に発酵が進んでいた。
有機物の発酵が進むと湯気が出るほど高温になる。そう、耳にしていたのだけれど、実際、そうなるものだと実感する。何これ、自然、スゲェじゃん。クソ暑い外気よりも手の中の草が熱い、激アツだ!。もはや草だけで無く、雑草を分解する微生物も一緒に運んでいるのだろう。カチカチの粘土質だった僕の土も少しはマシになる予感。今季は怠ったけれど来季は本気。それに加えて作付けスペースは今年の3倍。
勝ったな…。
───確変のフラグ立つ。
人は欲深き生きものである。そこに胡瓜とトマトを植える予定なのだけれど、肥料食いのトウモロコシや茄子を植えた方が良い気もして来た。ただ、外柵周りは台風対策として支柱のサポート役にもなってもらう。だからやっぱり胡瓜とトマトは外せない。
来月、天地返しをやってみて、調子が良ければクリムソンクローバーとホワイトクローバーの種をまこう。どちらも緑肥だから問題ない。雑草を運び終わった翌日、また同じ高さに雑草が積み重ねられていた。気遣いに感謝である。
───もう一発、やってみるさ。
他に場所だって幾らでもある。
ただこの作業、雨に当たると厄介である。嵐が来る前に終わらせておきたい。嵐が来ても運ぶのだろうけれど。
───今やらないと、来年、きっと後悔するから。
コメント
畑のお遊びは、本気の遊び。畑はやり始めると、ここまで、という事が出来なくなりますね。漆黒の肥沃な土壌になる頃には、ジムとは違う、自然に鍛え上げられた肉体、豊かな作物、釣りの餌が、手に入りますね。太ったミミズ。あっ、そちらは、主に海釣り?。ミミズ、淡水釣りだけでなく、海もイケるかなぁ?。試した事ないけど‥。
ホント、やり始めるとキリが無い世界ですね。天気予報から予定を立てて、夏なのに冬の事を考えて、それでも今の子のお世話もあって。嫌にならないのも不思議です(汗)。こちらは海釣りですが、ミミズはウナギを釣る時に使います。今は縄張りがあるようで、ウナギを狙うにはそれなりの覚悟が必要みたいです。
土がそんなに激アツになっているとは(*´∀`*)
なんか凄い!
もはや実験ですなぁ
全ての農民はサイエンティストだと痛感します。
日々、トライ&エラーの繰り返し。
天然の発酵風呂ですよ、あれは(笑)