水曜日(猫の話)

水曜日(猫の話)

飼い猫信長と野良猫家康(軽い決断)

梅雨も明けたある日。  縄張りを監視する家康のニャルソックだが、焼けるように熱い瓦の上になんていられない。野良猫のサマータイムの導入だ。日中は海の木陰で涼をとる。海に出たついでに、釣人から魚を分けてもらう。人間なんて、チョロい、チョロい。近づいて、ニャーニャー鳴いてりゃ勘違いを起こす生き物だ。あわよくば、ちゅーるがもらえる特典もある。家康はのんびりと、夏のバカンスを楽しんでいた。 「こんなところにおったんか? やっと見つけたぞぉ、家康ぅ!」  木陰で涼む家康に、暑苦しい猫の声。信長が家康に向かって走り寄る。 「久しぶりやな、秀吉」 「信長じゃ!」  毎回、繰り広げられる茶番にも、そろそろ家康は...
水曜日(猫の話)

それだとて、今日もサヨリは元気です(笑)

───水曜日は猫の話。 「猫ちゃん、いくつ?」 「忘れた」  意図的に、僕は愛猫サヨリの年齢を考えない。永遠の十歳くらいで留めておきたい。そうでもしなけりゃ、やってられない。それなりの老猫だけれど、まだまだイケるっしょ? そんなぶらり散歩気分で、毎日を過ごしたい。こいつの頭を撫でていたい。  猫ブームが始まってすぐ、猫を飼い始めた人々も、たぶん、同じ気持ちで生きている。僕は、そう思いたい。  ところが……だ。  思わぬ方向から、サヨリの年齢を考えさせられた───オカンである。  話は変わるが、オカンの飼い犬は僕のことが大好きだ。ちなみにメス犬である。その愛情表現があからさまで、飼い主のオカンが...
水曜日(猫の話)

ザブンとプール、二度目の夏

───水曜日は猫の話。  地球上に猫が誕生したのは13万年前。中東の砂漠を生息地としたリビアヤマネコだと考えられている。猫が水を苦手なのは、その影響があるからだ。そして、DNAに刻み込まれた生態は今も残る。猫はコタツで丸くなる(ならないけど)のは、猫が寒さに弱いからである。裏を返せば夏が好き。脈々と受け継がれた習性は、しっかりと愛猫サヨリにも残っていた。冬はコタツで越冬だ(汗) 夏は割と快適そうだった。とはいえ、2020年以降になると話は変わる。今でも可愛い顔だが老いには勝てない。夏の暑さが辛そうだった。気温が上がると体調が狂う。 ───サヨリさんは夏に弱くて……  過去の記事を読み返すと、そ...
水曜日(猫の話)

飼い猫信長と野良猫家康(浮気発覚)

降り続く雨の中、茶色い猫は屋根に通った。友達と会うために。しかし、家康が姿を見せることはなかった。雨雲を眺めて信長は思う。きっと晴れたら、家康も姿を現すだろうと。  翌朝。信長が窓の外を見ると、空いっぱいの青天だった。よし、晴れた。今日は家康に会えるだろう。信長は、ご主人様が準備してくれたカリカリを少しだけ残し、猫砂の上に用を足し、外の世界へ飛び出した。いわゆるこれが脱走である。 ───いた! 家康だ。  信長は、家康めがけて一目散に駆け寄った。 「家康ぅ! 家康、家康ぅ!」 「久しぶり。秀吉」  いつもどおりの〝秀吉〟に、信長は少しうれしくなった。それでこそ、家康だ。 「信長じゃ!」  信長...
水曜日(猫の話)

飼い猫信長と野良猫家康(裏切り者)

───裏切り者……信長の心は怒りに震えていた。  屋根の上、仲睦まじく語らう猫。それは紛れもなく家康とケイテイの姿であった───それを目撃した信長は、怒りで身も心も震えていた。ジジイのくせして、お前は孫ほど若い女に手を出すのか? なぁ、家康。そうなんだな? お前、生粋のロリコンなんだな! 初めて外の世界で信頼した男の裏切に世界のすべてが歪んで見えた。歪みの果はてに信長は誓う。俺の殺すリスト。最初に書く名は〝家康〟であると……。 「じゃ、またね♡」 「せやな……お前も、がんばれや」  ケイテイが屋根から降りるやいなや、信長は家康に駆け寄った。 「裏切り者ぉぉぉぉぉ!!!!」  やんのかステップで...
水曜日(猫の話)

飼い猫信長と野良猫家康(エモいの使い方)

いつもの屋根で家康はくつろいでいた。この一帯が家康の縄張りであり、見張りをするのに丁度いいのだ。そこのブロック塀の上、高々と尻尾を上げて歩く白い猫───ケイテイか……。家康は、ぼんやりとケイテイの姿を眺めていた。 「なぁ、家康ぅ~」  聞いたような声の先に、見たことあるような茶トラがいた……誰だっけ? 「馴れなれしいやんか? わけぇ~の。お前、誰だっけ?」  思ってもみない言葉に、信長は驚いた。 「ほら、あそこ。白猫の名前を教えてくれたやろ? どんだけ、高齢やっつーたって。2、3日前のことくらい覚えてるやろ? な、そんな目で俺を見るなよぉ~ 家康ぅ~」  信長は寂しげな瞳で家康を見つめた。  ...
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飼い猫信長と野良猫家康(出会い)

───四国のとある田舎町。  とある民家の瓦屋根の上で、二匹の猫が睨み合っていた……。 「おい、茶色のわけぇ~の! 誰の許可を得て、そこで座ってる?」  大柄なキジトラ猫が、スリムな茶トラ猫を威嚇する。 「うっせーわ。おっさんこそ目障りや! どっか行きぃ~な」  若い茶トラも負けずと応戦。 「はっはーん! お前、飼い猫やな。赤い首輪なんてしやがって。そっか、そっか。世間知らずか。だから、ワイに楯突けるんやな。今日のところは大目に見たるから、家に帰って、ウンチして寝てろ。お坊ちゃまのボンボンに、外の世界は無理やで。外は弱肉強食の世界やからな」 「はぁ? この老害がっ! おっさんの方こそ、ホームレ...
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白い猫

───僕は毎朝、電車の中で彼女を探す。  初めて彼女を見たのは高1だった。同じ時刻、同じ車両に彼女は乗っていた。名前も知らない彼女の姿。それを探すのが僕の楽しみになっていた。高3になった今でも続いている。見てるだけ。それで幸せ。もう、立派な変態さんだな……僕は。とはいえ、この生活も高校を卒業すれば終わってしまう。告ることすらできないだろう。でも、それでいい。あんなに可愛い彼女である。彼氏がいるのに決まってる……。  春休み、夏休み、冬休み。僕はそれが嫌いだった。だって、そうだろ? 何日も彼女の姿が見られない。高校最後の夏休み。窓越しで空が荒れ狂う。僕は二階の自室から、強風で流れる雲を眺めていた...
水曜日(猫の話)

もう、限界……

───水曜日は猫の話。  猫の話などナンボでも書ける。  真ん中もっこり水曜日、その考えが甘かった。月曜日から日曜日までの一週間のお題の中で、僕の時間を著しく圧迫するのが水曜日。老猫だもの……変化もなければネタもない。そして、このご時世である。生半可な知識で猫を語るのも危険が伴う。つまり……今のやり方はもう、限界。  猫の知識を書くのなら、虎の巻も実はある。友人がくれた猫本を元に書けばよい。一年前ならそれをネタにもできただろう。とにかく今は時間との戦いで、今日もサヨリは元気です(笑)  書籍の知識をダラダラと書くのも、何かが違う気がしている。それは、誰かが必ずしていることで、僕でなくても構わな...
水曜日(猫の話)

食事姿を見てやらないと、猫はご飯を食べない日がある

───水曜日は猫の話。  始まった……。  どういうワケだか、最近のサヨリの食が細くなった。人間だって食欲なき日があるのだから、猫だってそんな日もある。でも、僕は知っている───これが、サヨリのプレイ(性癖)なのだと。ご飯は食べたい、だから見ていて……見てくれないと食べません! おまいさんは、拗れた彼女か? 時たまやらかす、これがサヨリの悪い癖。まぁ、元気だからいいけれど(笑) 「どうした?」 「ごわぁ~ん(ご飯)」 「食うんか?」 「うーぅぅぅ……(当然だ)」  サヨリは食べる気満々。食べ始めたのを確認して、僕がポメラに向かうと、サヨリはご飯にそっぽ向く。またなのか? またアレが始まったのか...
水曜日(猫の話)

猫からのプレゼント

───水曜日は猫の話。  猫とは不思議な生き物です。不思議な縁を引き寄せる。最近それを強く思う。絶対に出会うはずのない人を、ぬるっと、さらっと、うちのサヨリが引き寄せた……。8年前、猫ブログを書き始めた。5年が経って、サヨリの出番は少なくなる。年老いた猫を記事ネタにするのは忍びない。寿命だもんな……そんな、別れの予感も感じていた。だから静かにフェイドアウト。体調が悪くなり、やせ細り、食事すらままらなない。そんなサヨリを書くのも辛い。それでも、今日もサヨリは元気です。今だって、サヨリは僕の膝の上。ご飯もチキンと食べています(笑)  あれだ……猫ブログを始めると、サヨリは何かしらの事象を引き寄せた...
水曜日(猫の話)

猫は賢い生き物です

水曜日は猫の話。  桃畑で摘果してると猫の話題で盛り上がった。かつて、猫を九匹も飼っていた勇者がいたからだ(現在三匹と同居中)。愛猫しか知らない僕にとって、興味深い話が飛び出す。その中で、オス猫は甘えん坊という話題に突入した───うちのサヨリは甘えん坊だけれど、果たしてオス猫は甘えん坊なのか? 「オスもメスも同じでしょ?」  甘えん坊なオス猫もいればメス猫もいる。僕はそう信じている。人間だってそうなのだから。 「オスは甘えん坊だよね」  そ、そうなん?……勇者にそう言い切られてしまう。 「メス猫は難しのよ。気分がコロコロ変わるから。甘えに来て撫でであげると、急に引っかいたりするからねぇ」  猫...
水曜日(猫の話)

うちのニャンコを実況してみた

水曜日は猫の話。  今日は猫の話題を書く日だけれど、猫の研究者でもない僕である。つまり、書くのはサヨリだけ。そうなると、どうなるかって? 老猫は基本、寝て起きて、飯食ってウンコして寝るだけだ。まぁ、普通に書くことがなくなるのだ(汗) それでも元々猫ブログ。猫の話題は欠かせない。けれでもそれが、徐々に僕の首を絞める。つーことで、たぶんこのブログ初であろう〝実況形式〟で書いてみよう。ブログだって、小説だって、何事も練習ですよ(汗) ───五月の陽気に晴れ渡らない日本列島。こちら香川は雨であります。  本日は5月1日。寒かったお正月。温かみを帯びた梅の花。それが、つい昨日のことのように思い出されるの...
水曜日(猫の話)

猫を初めて目撃した農夫の証言

───水曜日は猫の話。  この文献はUMA(未確認生物)を目撃した、とある農夫の貴重な証言記録である。そして、この証言記録は紛れもなくフィクションである……。  あれは蒸し暑い夜の日の出来事でした。妻が私に言うのです。 「ネズミの姿を最近見かけない」  と。皆さんもご存じのとおり、ネズミは穀物を食い荒らします。農夫の私にとって、ネズミは敵である存在です。去年もネズミにかなりやられましたから、ネズミが姿を消したのは大歓迎です。でも、あの年は異常でした───あんなにいた、ネズミが忽然と姿を消したのですから……。 「これは天変地異の前触れに違いない」  ってね。あまりにも妻が心配するものですから、私...
水曜日(猫の話)

謎のミミズ腫れ

水曜日は猫の話。  人は問う……。  己とは何か? 命とは何か? 宇宙とは何か? そして……猫とは何か? それに明確な回答を示した者はいるのだろうか? 高名な学者でさえ、今でも難解な問題であろう。すっと家庭に潜り込み、人をしつけ、意のままに人を操る。それに気づかぬまま、人は日常を繰り返す。猫とは永遠の謎なのかもしれない……。 ───なんでなん!  我が家に愛猫サヨリが潜入したころ、僕は謎のミミズ腫れに悩まされていた。目覚めると、決まって右腕の肘から手首にかけて10センチほどのミミズ腫れができているのだ。ジンジンして焼けるような痛みで目が覚める。定期的ではないにせよ、数回続くと不安にもなる───...
水曜日(猫の話)

コタツ恋しき冬も終わり

コタツ恋しき冬も終わり……か?  水曜日は猫の話。  事務所の室温が20度を維持し続けている。日が沈み外の気温が下がろうとも、鉄筋コンクリート造の建物は夜の室温が高くなる。そんな性質があるのだろう。夏になると嫌でも体感できるのだけれど、室温32度を超えた記憶がまるでない。そんな意味からも、この部屋は割と快適だと思っている。  狭いコタツで冬を過ごした愛猫サヨリも、室温の高さに乗じて室内でウロウロしている。つーか、気に入った場所を見つけては転がっている。床、デスク、コタツの天板、リクライニング。ノマドワーカーのように移動を繰り返しながら、気がつけば僕の膝の上───お前、絶対に太ったろ?……僕の太...
水曜日(猫の話)

うちの老猫、カリカリ復活!

水曜日は猫の話。 「ごわぁ~ん!」 「また食うの?」 「ごわーん!」 「腹……壊すぞ?」 「ごわーーーん!!!」 「吐くなよ」 「わん!」 「おめぇーは、犬か?」  解ってんだか、解ってないのか? 何故だか猫との会話が成立している。愛猫サヨリが大飯ぐらいになってから、そろそろ一年が過ぎようとしている。あんなに食が細くて、何軒も食べられるものを探してスーパーを梯子したのに。パウチを沢山食べるようになった。とはいえどもだ……これから気温が上がるとちと困る。だって、そうでしょ? パウチって、あれだ……お皿に出したら腐るから。もしも残して、仕事の間にそれを食べたら……腹を壊すに決まってる。それはとても...
水曜日(猫の話)

うちのニャンコの「ご飯のおかわり!」モノ申す

水曜日は猫の話。  猫はご飯を残しがち、うちのサヨリもそうだった。どういうワケだか、少し残して目もくれない。酷いときには、半分以上もカリカリを残して目もくれない。なのに、新しいのを与えると、胃袋をリセットでもしたように食べている。この頃から、僕にとっての猫の存在は謎だった。いつも隣の不思議ちゃんが、置物のように座っていた。かれこれ、十年以上も昔話だ。  その不思議ちゃんは健在で、食欲は当時よりも多いように感じている。まぁ、僕の顔を見れば「ごわぁ~ん」である……他に言うことないのかね?それでも、老猫には問題がある。胃袋は若いつもりなのだろうが、度を越せば吐き戻す。誰がゲロの掃除をするのかね? だ...
水曜日(猫の話)

猫はうんちで抗議する!

水曜日は猫の話。  うちの猫が変なのか? はたまた、それが猫の習性なのか?  うちのニャンコは、うんちで抗議します。  事務所に戻ると、ニャーニャーの声に心臓が揺れる。それはいつもの日常で、今日もサヨリは元気です(笑) その鳴き声は、年を追うほど大きくなった。赤ちゃん返りでもしているのだろうか? そりゃ、そんなことをされたなら、たとえ老猫だろうが愛おしい。 「寂しかった? 抱っこしちゃうぞ~! この、このぉ~!!!」  って、傍から見れば気持ち悪い行動だってやってしまう。声だって、2オクターブくらい高くもなるさ。 「てか、抱っこよりも飯だろ?」  いつもそう、いつだってそう。僕に抱っこされたサ...
水曜日(猫の話)

老猫飼いに言わない方がよい一言

水曜日は猫の話。 ───痩せたねぇ……  猫でも、犬でも、年老えば痩せてくる。人間の年齢に当てはめて、七十代、八十代の老体で、ぽっちゃりさんは割と少ない。飼い主が食事に気を遣うのと、猫も食が細くなるからだ。我が家の老猫サヨリも例外ではない。食は太いが体は細い。ガリガリではないのだが、ほっそりとしたスリムな体系を維持している。たぶん、現状がベストサイズ。  だって、そうでしょ? この子、僕の知る限りでは、太った経験が一度もないのだ。だから、わざわざ太らせる必要性すら感じない。食べる量は多いのだから、瘦せの大食い体質なのだろう。いわゆる、ギャル曽根体質だ(汗)  そのすべてを理解した上で「痩せたね...