のんちゃんのブログ王

日曜日(ブログ王スピンオフ)

のんとゆいのビデオ通話

地元の美容学校へ通うウチは、定期的にのんちゃんと連絡を取っていた。のんちゃんはガラケー派だけれど、両親が心配するという理由から、大学入学を機にスマホデビューを果たしていた。  のんちゃんは、大切な人だけにスマホ番号を教えるのだと言う。あの容姿なのだ。それくらいで丁度いい。女子大生の身分でスマホとガラケーの二台持ち。人はそれを贅沢だと思うだろう。ところがどっこい、のんちゃんは天下の旅乃琴里である。それくらいの出費なら問題ない。今まで、そうしなかったのが不思議なくらいだ。てか、最も胸を撫で下ろしたのは、出版社の人だろう。なんてったって、ビデオ電話ができるのだから。打ち合わせの効率も上がる。 ───...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

白いヘッドホン

土曜日。  今日は喫茶グリムで新メニューのお披露目会だ。メニュー開発に貢献した、ツクヨと忍の小五コンビも招待された。ふたりは朝からツクヨの部屋ではしゃいでいる。きっと忍は、俺に見せない笑顔なのだろうなぁ……。 「なぁ、オッツー。頼まれてくんね?」  俺は事前にサプライズを準備していた。免許を取得したオッツーに送迎をお願いしたのだ。きっとツクヨは飛び跳ねて喜ぶだろう。あいつはオッツーと一緒なら、いつでも幸せを感じる子どもだから。  叔父贔屓おじびいきを差し引いても、ツクヨは可愛らしい女の子だ。中学になれば、いずれ告られる日が来るだろう。彼氏ができれば〝わたしのオッツー〟からも卒業だ。そうなれば、...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

のんちゃん、初めてのさぬきうどん

サヨちゃんを追いかけて、四国の大学へ進学したのんちゃんには夢があった。それは、サヨちゃんと本場のうどんを食べること。それが叶う前日の夜。わたしは、明日の予定をサヨちゃんに訊いた。そう……わたしがまだ、小学五年生だった頃の話である。 「サヨちゃん。明日もグリム? グリムでのんちゃんと会うの?」  わたしは訊いた。 「明日は、のんと一緒にゲンちゃん行くけど。のんちゃん、ずっと我慢してたんだって。さぬきうどんを食べるのを。だから、食べさせてあげようかと思って。ツクヨも行くか?」 「あわわ……」  わたしは一瞬、固まった。わたしだって五年生。子どもみたいな野暮などしない。わたしに構わず行ってこい! 「...
金曜日(小説の話)

名作か? それとも迷作か?

───金曜日は小説の話。  日曜日、新作の滑り出しを確定させた。とはいえ、いつも最初が難しい。いつまで経っても決まらない。下手すりゃ最後まで決まらねぇ(汗)  プロローグと第一話の原稿を、そっくりそのまま相棒へ送る。締め切りなしの期限なし。ゆっくり読んで下さいね。そんなぶらり散歩気分で送ったけれど、翌日に回答メールが飛んできた(汗)  プロローグは短文で、エピローグも短文で、第一話は長文で、今日もサヨリは元気です(笑) プロローグはフックの役目で、第一話は主人公とヒロインの紹介だ。今回は登場人物がガチで多い。主要キャラの全員を登場させたパターンは、すでに相棒に送信済み。けれど、どう考えても今回...
木曜日(雑談)

喫茶アンデルセン

───木曜日は雑談の日  きゅうりってのは、放っておくと大変なことになる。どんどんデカくなって味が落ちる。その成長速度も早い。一本残らず収穫しても、三日もすれば、今日と同じ光景が目の前に広がるのだ。既視感(デジャブ)なんて甘い話じゃない。もはやこれはループである───今年のきゅうりは強敵だ。  きゅうりの貰い手を考えないと、冷蔵庫が飽和する。ついでに、僕の胃袋だって、そこまで寛大にはできてない。農作物が金を介さず流通するのが田舎である。捨てるなら、誰かにあげよう畑の野菜。それは美しい考えだ。けれど、分ければ余る、奪えば足りない。この現実に直面する。今年はきゅうり余りの年なのだろう。その証拠に、...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

シュークリームが新メニュー

のんがグリムでバイトを始めると、客層が一気に変わった。のん目当ての客が増えたのだ。来客増加は売上げに繋がるけれど、マスターは困り顔だ。にしても、今日はお客が少ないな……そっか、のんは早上がりの日だったっけ。そんな日は、のんは一度、アパートへ戻る。ラフな姿に着替えてから、お客として来店するのだ。そして、俺の隣で勉強を始める。本でパンパンに膨れた、のんのリュックを見る度に、俺は桜木のランドセルを思い出していた……。 「ねぇ、飛川君。若い男の子が来てくるのはうれしいけど……飛川君なら分かるでしょ? 何かいい案……持ってない?」  グリムの奥さんが俺に問うのだが、都会からレベチな天使が舞い降りたのだ。...
金曜日(小説の話)

のんちゃんのブログ王は、しれっと第二章へ突入しました

───金曜日は小説の話。  小説を書き上げた達成感の裏側で、モヤモヤした不完全燃焼な気持ちがあった。僕はプロじゃないのだから、ここは好きにやらせてもらおうか(笑) そんな気持ちで、描ききれなかったアレコレを、スピンオフで書き始めた。てか、このまま終わるのが寂しくて、今日もサヨリは元気です(笑)  オッツーには悲しい過去がある。桜木には次元を超越した背景がある。ツクヨのパパには深い愛があって、じいちゃんには叶わぬ恋が……。それを書き進めていれば、本編への熱だって冷めないだろう。処女作だから、てか、長編だもの。どれだけ伸びても構わない。どこまで行っても構わない。  ちょいちょいと、本編から未来の話...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

喫茶グリム

パワースポットと呼ばれる場所がある。  ブログ王を完成に導いた場所は、八栗寺(四国八十八箇所第八十五番札所)の境内だった。境内けいだいにある青いベンチに座ると、不思議とアイディアが浮かぶのだ。そして俺には、もうひとつのパワースポットがある───喫茶グリム。老夫婦が営む店内は、カフェと呼ぶにはほど遠く、俺のじいちゃん好みの昔ながらの雰囲気だ。  この店で俺は、ブログ王にさらなるブラッシュアップを施した。謎の編集者、青葉さんに奨められた新人賞に〝のんちゃんのブログ王〟を応募するため。そして俺たち放課後クラブが、高校最後の打ち上げをした店でもある。  ただ、ひとつだけ……俺には不思議に思うことがあっ...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

ツクヨの父の日

今日は、六月第三日曜日───全国的に父の日である。  父の日だからって、我が家の夕食はいつもどおりだ。かろうじて、母の日の名残りはあるのだが、父の日はごくありふれた日曜日。けれどツクヨが我が家の一員となった今、状況が少し変わった。ツクヨには父と呼べる存在がいない。それを気遣い、お茶の間をピリピリさせていたのは、俺とオトンだけであった……。  口チャックにテレビまで消して、父の日情報を遮断する。父の日は───ツクヨに禁句だ。  いつものように夕食を始めると、思い出したように、ツクヨがテテテと部屋に戻っていった。条件反射で俺は訊く。 「アヤ姉、ツクヨは?」  トボけた感じでアヤ姉が答える。 「そっ...
木曜日(雑談)

ブログ読者様からのリクエスト

───木曜日は雑談の日。  ブログを書き続ける最大の壁がネタである。それは、ブロガーすべてのラスボスと称しても過言ではない。書き慣れたブロガーが書き続けることは容易い。けれど書くことを探すこと。それが事態をより困難にさせているのだ。だって、そうでしょ? これまで幾度も書いているけど、毎日の更新にはネタがいる。何かを書こう。そう思わせる動機と言い換えてもいい。それが思い付かない時の焦りたるや……地獄である(汗)  端的にネットニュースから情報を拾えば、アクセスに繋がるし、日々のネタにも困らない。無限に書き続けることが可能なのも知っている。平成の時代にそれは経験済みだ。アクセスを稼ぎたいのなら、Y...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

ツクヨのこと、どう思っているのかな?

午前零時のダイニング。  ドアを開くとオトンがいた。ニヤニヤしながら、ひとり淋しく缶ビールを飲んでいる。酒のつまみはイカの足。テーブルの上に350mlの空き缶が二本あった。つまり、手にしているのが三本目。飲み過ぎだ……。  左手に持つスマホには、ツクヨの写真が表示されている。今年のハロウィン、仮面ライダー2号のコスプレ。ツクヨがオッツーの好みに合わせたのだろう。オッツーのベルトを腰に巻いて、ご満悦のよき笑顔である。オトンのスマホは、ツクヨちゃんの詰め合わせ。それを眺めて、夜遅くにニヤついていたというわけか……健気だ。 「まだ起きていたのか? 受験勉強、がんばれよ」  す、すまん……そうじゃない...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

ツクヨの桃を召し上がれ

「お前もひとつ、選んでみるかい?」  じいちゃんの気まぐれがブランド商品を生み出した。  草刈り、摘果、袋掛け。五月に入ると親戚の桃畑が忙しい。昨今の人手不足と農家の高齢化問題とが相まって、中二になった俺にもお鉢が回る。日曜日なのに桃畑。脚立の上で桃の実を間引く。遊びに来ていたオッツーまでもが脚立の上で汗を流す。何か……すまんな、オッツーよ。  オッツーが行くのなら、コイツが来ないワケがない。もれなくツクヨも付いてくる。赤い長靴に麦わら帽子。一瞬で畑のアイドルの座を射止めたツクヨは、動物園や水族館にでも来たかのように、キャッキャと桃畑を満喫している。相も変わらず自由なヤツじゃ。  そこで、じい...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

聴講生 橙田飛鳥

───人の顔はひとつではない。  学生と聴講生。橙田飛鳥とうだあすかはふたつの顔を持っていた。それは、大した問題ではない。言い換えれば、女子大生と追っかけなのだから。高三の夏、オープンキャンパスで飛鳥が恋した彼は、理論物理学の研究者であった───ワタシは行く、彼の元へ! 飛鳥は名門T大を受験してサクラチル。それでも飛鳥はくじけない。桜は散れども恋は咲かせる。  K大への進学を決めつつ、同時に飛鳥はT大の聴講生の資格も手に入れた。ピカピカの聴講生証に飛鳥は誓う。先生の講義のすべて───ワタシはそれを受け切ってみせるのだと……。初講義にときめく飛鳥……にしても、異様に多い女子の数。それもそのはず、...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

ツクヨとオッツー、海の約束

───オレのお嫁さんになればいい……。  オッツー家からの帰り道、それをツクヨは思い出す。三縁さよりとオッツーとの三人で、釣りに出かけた夏の日を……。 「ねぇ、オッツー。わたし……どうおもう?」  ツクヨはおませな小三だった。 「可愛いぞぉ~」 「エヘっ!(笑)」  オッツーからの予期せぬ言葉に、ツクヨは頬を赤らめた。 「リュックのペコちゃんが」 「そう……ですか……」  気まずい空気が防波堤ぼうはていを駆け抜ける。気まずいのはツクヨだけ……。釣りに夢中のオッツーは、ツクヨの変化を気にも留めない。  一緒に来ていた三縁はというと、ツクヨをオッツーに任せっきりで、秘密のポイントで竿を振っている。...
金曜日(小説の話)

いつまでも、スピンオフを書く理由?

───金曜日は小説の話。  金髪頭に僕は言う。 「お前は、スーパーサイヤ人か?」  こんな感じで、取りあえずツッコむ。  それは、金色に髪を染めて、髪の毛をツンツン立ち上げて、何だよ───それ? これを短くすれば、僕の場合これになる。スーパーサイヤ人の一言で、強く見えたり、凄く見えたり、急に雰囲気が変わったり……誰しもが、様々な場面で使える便利なワード。鳥山明先生の大発明で、今日もサヨリは元気です(笑)  小説を書き始める前。  僕のブログの中を読み返せば、悟空、ベジータ、フリーザ様……多くの人気キャラクターを例え話に使っていた。発情期ですかぁ~この野郎! 銀さんだって外せない。それを使って当...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

オッツー家のシチューの秘密

桜木とオッツー、アケミとゆき。そして、俺。   俺たち放課後クラブは、メンバーの誕生日が年中行事に組み込まれていた。転校生の桜木は小学からだけれど、他のメンバーは幼稚園からの幼馴染み。物心ついた時から誕生日祝いは当たり前だ。当然のように、ツクヨもその輪の中に入っていた。時は流れ、俺たちは社会人になり、ツクヨは中学二年になった。それでも、誰かの誕生日には、何処かで集まり誕生会をしていた……。  今現在、ツクヨに最も近い存在はアケミである。社会人になっても、アケミはBL小説を書いている。その表紙絵を飾るのがツクヨのイラストなのだから。同人誌イベントが近くなると、ふたりの情報交換が密になる。そして、...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

この手紙は、作家デビューへの架け橋ですよ

のんと楽しいクリスマスを過ごした翌年。地元大学への入学切符を手に入れた俺の元へ、青葉導人と名乗る人物から手紙が届いた。俺は思った───詐欺かもしれない。とてもじゃないけど、こんなの俺の手に負えない。だから、次の一手は決まってる! 桜木だ。俺は手紙を手に持って、ゲンちゃんうどんに桜木を誘った。この手紙が、俺の人生のターニングポイントになるとも知らずに……。 「ごめんな……桜木、上京の準備で忙しいところ。こんな手紙が来たんだけど……俺、バカだから手に負えなくて……」  桜木が俺宛の手紙に目をとおすと、ぱっと表情が明るくなった。 「こんな手がありましたか……」  明るい顔で意味深な言葉を口ずさむ。 ...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

オッツー家のシチューの謎

その日。オッツーは学校帰りに三縁の家でゲームをしていた。オッツーが三縁の家で晩飯を食べる。それは、彼らにとって日常のひとコマでもあった。ただ、オッツー家がシチューの日だけは例外であった。 「悪ぃ~な。俺、これからブログ書くから」  三縁は自分が使っていたゲームのコントローラーをオッツーに渡した。 「そっか。じゃ、ツクヨっちオレと格闘やる?」  オッツーは、それをツクヨの手に渡す。 「やるやる。きょうは、オッツーにまけない!」  三縁はブログを書き始め、オッツーはいつもの格闘ゲームでツクヨと対戦を始めた。その時すでに、幼きツクヨの格闘センスは、ゲームの天才の片りんを見せていた。  到底、三縁クラ...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

ゆい、初めてのホラ貝

中二の春。  のんとゆいは、二年でも同じクラスになった。それは偶然なのか? それとも、不登校だったゆいへ学校側からの配慮なのか? それは誰にも分からない。けれど、のんと同じクラスにゆいはとても喜んだ。 「またウチら同じクラスだね。よろしくね、のんちゃん」  ゆいの笑顔が止まらない。 「ほんとだねぇ。よろしくねぇ、ゆいちゃん」  のんも目を細めて笑みを返す。  一学期最初の席順は出席番号順であった。視力が弱いのんの席は、いつもと同じく教壇の前である。休憩時間になると、ゆいはのんの席で話しをする。お昼はのんと一緒に弁当を食べる。このスタイルは中一時代と同じまま。それがゆいにはうれしくてたまらなかっ...
日曜日(ブログ王スピンオフ)

オッツーのライダースーツ

オッツーは待っていた、何日も何日も待っていた。 日曜日の午後の時間帯。ある男が道の駅で休憩する。そんな噂話を聞きつけて……。そこで、彼が自動販売機でコーラを買うらしい……雨の日も、風の日も、オッツーはひたすら彼を待ち続けた。あの人にオレはなる! そんな闘志を心に秘めて。  小6の夏休み。道の駅で張り込みを始めてから半年後。オッツーは、ようやく彼の姿を見つけた。それは、サイクロンで公道を走る仮面ライダーの雄姿であった。憧れの男を目にしたオッツーは、無心で彼の元へと駆け寄った。 「あの……初めまして。僕は尾辻正義と申します。半年間、ずっとアナタを待っていました」 「初めまして、半年も待っててくれた...