吾輩だって猫だった
人は神様の自分勝手な気まぐれを〝奇跡〟と呼ぶ。 もしも生まれ変わりがあるのなら、猫でよろ……。死に際に老人はそう願い、その長き人生を終えた。かつて、この老人と暮らした猫がいた。息を引き取るその日まで、自由奔放に暮らした愛猫に、老人は憧れを抱いたのだろう。その猫の微笑むような死に顔は、水色の夏空のように清々すがすがしかった。「そうなれば、いいですね。へへへへへ」 老人を迎えに来た死神は、そう言って笑った。「お主の行き先はここじゃ」 そう言って産神うぶがみは、新たな未来の扉を開いた。老人は産神の声に従って、扉の中へ身を投じた。扉の向こうは暗闇のトンネルのようで、遠い先に光が見えた。老人は、光に向か...